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不穏な気配
翌朝、目が覚めると火が消えていてミヤはまだ眠っている。まだ薄暗い森を見渡し美琴は少
し違和感を覚えた。
「生き物の気配がない?」
静かな早朝の森で生き物の気配を感じないのはとても不自然で気味が悪い。この辺に森の主
でもいるのかと考えたがそれにしても暗く嫌な何かを感じる。
「見られている…?」
美琴は闇に包まれた森の深部を見る。鳥たちが空に羽ばたく音がするが美琴はじっと一部分
を睨みつけた。
「…嫌な視線が消えた?」
次の瞬間には動物たちの気配があちこちから感じるようになる。
「お姉ちゃん」
「起きたかのか。ミヤ」
目をこすり眠そうに欠伸をする。
美琴の裾を握りじっと顔を見る。
「お腹空いた」
腹の虫をならし手をお腹に添えていた。
「取りあえず朝食にするか」
二人は近くの川まで移動すると魚を捕まえようと川に入る。美琴は動きやすい様に帯で着物
を結んでいた。
「早く魚を取るぞ」
「何で昨日みたいに獣を捕まえないの?」
「…今日は魚の気分なのだ」
満面の笑みで答える美琴をどこか冷ややかなに見るミヤ。
「早くご飯を食べたい」
「なら急いで魚を捕まえないとな」
「はぁ~」
深い溜息をするとミヤは川の中を見る。魚はある程度の数がおよいでいるが素早く泳ぐ魚を
ミヤは捕まえる事ができず足を滑らせ尻餅をついてしまう。おかげで服はびしょびしょになっていた。
「ぷっ」
笑いそうに美琴を睨みつける。
「まだまだ修業が足りんな」
そういう美琴も魚を捕まえようとするが足を滑らせる。
「あちゃ~」
完全に川の中で尻餅をついて美琴は呆然としていた。
そんな美琴を見てミヤは可笑しくて笑い出してしまう。つられて美琴も笑う。
「まったく二人してざまぁないな」
「うん」
ミヤを楽しそうに頷いた。
その後一時間ほど格闘してどうにか二匹捕まえる事ができた。
「疲れたな~」
「お腹が減ってもう動けない」
「すぐに魚を焼くから待っていろ」
手際よく火を起こし魚を焼いた。香ばしい香りが二人の食欲を促進させた。
「それではいただきます」
「いっ・・いただきます」
ミヤはぎこちなく美琴の真似をする。
「美味い!」
「おいしい」
魚をほおばり二人は目を輝かせる。
しばらく無言で食事をしていく二人。朝から川に入り魚との格闘でお腹はペコペコになって
いた。
「ふぅ」
美琴はお腹をさすると空を見た。
「天気もよさそうだな」
「お姉ちゃんはこれからどうするの?」
「ん? どうした藪から棒に」
「だって僕を置いて行ってしまうんでしょう?」
ミヤの頭をなでる。
「私はミヤを一人にはさせないよ」
笑顔の美琴につられてミヤも笑顔になる。どうやら置いて行かれるという不安からの言葉で
あったようだ。
「それじゃいくか」
「うん!」
ミヤの元気な返事と同時に二人は歩き出した。
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