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魔女
古く大きな扉を開けた。軋みながら思いのほか力を入れなくても扉を開ける事ができた。
「誰かいませんか?」
美琴は大きな声を上げて人がいないかを確認する。
ミヤの手が先程よりも強く握ってくる。何かに怯えているようで震えていた。表情は暗いせ
いで見えなかったが息が荒くミヤの恐怖が感じられる。
「ミヤ?」
「ようこそ我が屋敷に」
突然の女の声に驚き前を向く。
「旅のお方ですか?」
「ああ…そうだ」
美琴の勘が最大級の警報を鳴らす。こいつはやばいと本能が囁く。
「そうですか。なら一緒にお話しでもしませんか?」
「すまないが私は遠慮させてもらう」
「あら、つれない」
後ろの扉が閉まり周りが真っ暗になる。隙間から入る光で何とか女を視認することはできた。
「何を怯えているのですか? 私はそんなに怖くはありませんよ」
「お前からは命の息吹が感じられない」
「ふふ。そんな事まで分かるのですか」
女は手をかざすと少しずつ近づいてきた。
「くるな」
美琴は構えると臨戦態勢に入る。
「そう…残念ですね!」
美琴の足元から手が出てきて足首を握る。
「これは?」
部屋中からゾンビ化した亡者が美琴達へと襲いかかる。
「はぁ!」
高速の抜刀術で足元の手を切り離す。そしてミヤを連れて壁際に行くと守る様にミヤの前へ
と出てゾンビと相対した。
「来い!」
最初に襲いかかってきたゾンビを一刀両断する。縦に真っ二つに斬り裂かれたゾンビは床に
崩れ落ちる。
キン
刃を鞘に納める音が鳴り響く。
「ガァァ」
ゾンビたちが一斉に襲いかかる。
美琴の刀が襲いかかるゾンビを次々と斬り捨てていく。手足を斬り落としても動き出すので
ゾンビの首と胴を切り離す様にしていく。
「くぅ」
ズバッ
水が流れるように滑らかな動きで放つ斬撃はただ美しく敵である女とミヤはただ見惚れてい
た。
女は突然笑い出す。
「ははははは」
「何がおかしい?」
「私は嬉しいのですよ。予想以上の素材に出会えて」
「素材?」
「そうあなたは私が真理にたどり着くための大切な素材です。あなたを解析して取り込めば私は誰もたどり着けなかった真理へとたどり着くことができる」
「お前の目的はそれか…」
「ふふふ…申し遅れました。私の名はメディアと申します。美琴さん」
「どうやら私は誘い込まれていたようだな」
美琴は自嘲気味に笑う。
「この森に来たのは何故ですか?」
「森に入る子供を見かけたから連れ戻そうと追いかけてきた」
「ふふ、その子供とはそこのミヤですよ」
ミヤをチラリと見ると直ぐにメディアへと視線を戻す。
「なかなかのできでしょう。私の自信作です」
「ミヤはお前が作ったのか?」
「はい。新鮮な子供の死体が手に入ったのでそこに転がっている出来損ないとは違い美しい
人形ができました」
「どうやって手に入れた」
「森で行き倒れになっていた家族を利用して作りました。一応言っておきますが私は直接、手を出していませんよ」
心が凍るそうな冷たい笑みを浮かべているメディア。
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