敗北

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敗北

 「ふん。その家族を森に迷わせたのはお前だろう」  美琴の声に怒気が混じる。  「何を根拠に」  「ミヤと出会ってから森の息吹が感じられない時があった。おおかたお前が結界か何かを張って迷うように誘導していたのだろう」  「魔力を感知できない術のはずが美琴さんにはお見通しでしたか。ますますあなたが欲しく なりましたよ」  「こっちは願い下げだ」  美琴は刀を構えて臨戦態勢に入る。  「はぁ!」  瞬時に間合いを詰めると高速の抜刀術で斬りかかる。  「無駄です」  美琴が放った斬撃を土の壁が遮る。  「ここは私の魔術の工房。今のあなたの力では破る事はできない」  「ちぃ!」  すぐさま間合いを取り刀を構える。  「まんまと罠にはまってくれて感謝しますよ。 大人しく捕まれば余計な苦痛を味合わなくて 済みますけがどうしますか?」  「ふん。お前なんかに体を解剖されるなんてごめんだ」  美琴はまた間合いを詰める。  「同じことを」  土の壁が美琴の前を遮るが壁の直前で飛び上がる。そして一回転するとメディアの後ろへと 着地した。  「なに!」  美琴の刃が襲いかかるがまた土の壁が遮った。  「無駄です」  「まだまだ!」  美琴は高速で移動しながら土壁の隙を探す。 メディアの動体視力では追いきれない速度で動くので次々と土壁が周りにできてくる。  「何をするつもりです」  土壁の隙間から美琴の刀の切っ先がメディアへと届こうとしていた。  「おのれ~!」  メディアは周りの土壁を発散させ吹き飛ぶ土と美琴。だが美琴は体勢を整えると再びメディアへと斬りかかった。  美琴の刃がメディアの頬にかする。  「私の顔に傷を…」  「届かなかったか」  明らかに服装がボロボロの美琴であったメディアを追い詰めようとしていた。  「許さんぞ小娘!」  メディアは激昂すると三メートル程のゴーレムを三体作り美琴に襲わせる。    ドカァァァン  ゴーレムの攻撃を避ける美琴であったが三体相手ではいつか体力が尽きてしまう。メディア の体内と言うべきこの屋敷では圧倒的に不利であった。  「余計なのと戦っている場合じゃないな」  動きがそこまで速くないゴーレムを適当にいなすとメディアへと近づき斬りかかる。  「くっ!」  美琴から距離を取ろうとするが移動速度では敵わない。  「ならば!」  美琴に炎の渦が襲いかかる。  「!」  寸前の所で避けるとまた駈け出す。  「はぁ!」  メディアが両手をかざすと辺りは炎の海へと変わる。  美琴は炎の海で燃え尽きたかに思えたが足を止めることなく駆け抜ける。もともとアマテラ スの加護を受けている美琴は炎に関しては耐性がある。  「バカな!」  「もらった!」  メディアの首に刃が届こうとしたがそれを身を挺してミヤが遮る。  「くぅ」  寸前で刀を止める美琴。  ミヤの顔は悲しそうに美琴の顔を見ていた。美琴はミヤごと斬る事もできたがそれをどうし ても斬る事はできなかった。例えメディアに作られ操り人形だったとしても先程のミヤの笑顔がちらついてしまった。  「お姉ちゃん…」  「気にするな」  美琴は泣きそうな顔のミヤに向けて笑顔になった。  「がはっ!」  動きが止まった美琴をゴーレムが押さえつける。身動きが封じられた今では自力でどうする 事もできない。  「こんな人形の為に優いつの勝機を逃すとは驚きましたよ。それでは大人しくしていて下さ いね」  ゴーレムごと地中へと飲み込まれる美琴。  「ふふふ、その牢獄は別空間にある特別製です。あなたに脱出は不可能」  「お前に言っておく。私はお前を必ず斬る!」  メディアは美琴の狂気じみた目に恐怖する。    「世迷言を…。」  「私には心強い仲間がいる。お前は必ず負ける」  「さっさと消えなさい!」  怒鳴りつけると美琴は地中へと消えていった。  「馬鹿な事を、このテリトリーの中なら私は無敵です。それに私には強力な切り札がありま す。負ける訳がない」  何か悪寒を感じるメディアは屋敷の奥へと消えていった。
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