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異変
「美琴!」
禅宗は学園の建物の中でいる事のない美琴を探している。美琴が消えている事に昨夜気づい
た禅宗とその仲間達は夜通しで広い学園内を探し続けた。
「ったく。あのじゃじゃ馬娘はどこにいったんだ」
美琴の迷子はこれまでもあったが今回は何故か嫌な予感がしてたまらなかった。
「禅宗!そっちはいましたか?」
美琴と同室でアリスの姉であるジャンヌが青い顔で禅宗に話しかける。
「駄目だ。どこにもいない」
「…そうですか」
ジャンヌがガックリして下を向く。
「ですがここまで探して見つからないという事は…」
「学園の外に行ったのかもな」
「でもなんで?」
「何かにおびき寄せられたとか」
「…まさか!」
ジャンヌは更に血の気が引いてしまう。
「深淵の魔女に呼び寄せられたなんてことは」
「深淵の魔女?」
「はい。学園の裏にある広大な森に封印された悠久の時を生きる魔女です。かつてブリテン
の神具使い総出で戦い封印するのが精一杯だった程の強力な魔女ですね」
「そんな危ないのがこんなに近くにいたのか」
「何百年も姿を見た者は一人もいません。私もおとぎ話としか思っていなかったのですが
先日の騒動の時に美琴さんに目をつけたのかもしれません」
「だが何百年も姿を見たのはいないのだろう?」
「そうですが嫌な予感がします」
禅宗と同じくジャンヌもまた嫌な予感を感じていた。得体のしれない悪寒を感じながらも二
人は美琴の無事を強く信じていた。
「とにかく本当に美琴が森に入ったなら大変で す」
「だが確信がないのに森に大勢で入るのは二次遭難になる可能性があり危険だな」
「ならどうするのですか?」
「どんな状況でも生き残りそうな奴を連れていく」
「それは誰ですか?」
禅宗は邪悪な笑みを浮かべると何も知らない赤髪の少年を見た。
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