――それで、どうしますか?

4/5
前へ
/19ページ
次へ
「……初恋の、女性(ひと)……」  そう、ポツリと呟く。……先生に、そんな人が……いや、この言い方はおかしいか。でも、今になってそんな人と再会なんて、そんな偶然……いや、なくはないか。後になって学生時代の先生と遭遇することなんて、別に珍しくもないだろうし。 「――ですが、父は動けずにいた。一歩を踏み出せないでいた。彼女に対する遠慮なのか、私に対する配慮なのか、自信がなかったのか――あるいは、その幾つかあるいは全てなのかもしれません。  そういうわけで、差し出がましくも私が背中を押すことにしました。母親がほしいと、そう伝えたのです。尤も、私は母親がほしいわけではありませんし、父もそれを文字通りに捉えたとは思いませんが……それでも、私が父の背中を押しているということは伝わったはずですし、実際に行動を起こしてくれました。父なりに彼女と少しずつ距離を縮め、ほどなく交際――そしてこの度、めでたく入籍の運びとなりました」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加