不敵な少女

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不敵な少女

「……紗那(さな)、さん……」  不意に届いた思い掛けない言葉に、呆然と声を洩らす僕。……いや、実際のところ彼女の気持ちに全く気づいていなかったとか言えば、きっとそうでもない。……だけど、それでも―― 「――やはり、予想外でしたか? 貴方が、同性である父に対し恋慕を寄せていると知りながら、こうして私が想いをお届けしたことが」 「…………うん」  すると、僕の疑問に答えるようにそう問い掛ける紗那さん。そう、彼女はとうに知っていた。僕が、同性である先生に想いを寄せていることを。なのに、こうして僕に―― 「――ですが、それだけのこと。貴方が、男性である父に恋慕を寄せている――事実は、ただそれだけのこと。貴方が、そういう感情を抱かないという事実は何処にもありません」  
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