不敵な少女

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「…………それは」  そう、ふっと微笑み告げる紗那(さな)さん。……確かに、そうなのかもしれない。正直、そう言われてしまえば返す言葉もない。……ただ、それでも―― 「ちなみに、私と入籍すれば――なんと、愛しの奏真(そうま)先生がお義父(とう)さまになるという唯一無二の特典がついてきますよ、楓和(ふうな)さん?」 「……いや、特典て」  真剣な思考の最中(さなか)、ふと届いた思い掛けない――今度は、本当に思い掛けない言葉に少し可笑しくなる。……いや、特典て。まあ、確かに今のところ唯一無二ではあるんだろうけど。 「――まあ、それはともあれ」 「……あの、紗那さ……っ!?」  刹那、思考が――呼吸が止まる。卒然、さっと距離を詰めた彼女の柔らかな唇が、瞬く間に僕の唇をそっと塞いだから。  その後、ややあってゆっくりと唇を離す紗那さん。未だ呆然とする僕に、少し可笑しそうな微笑を浮かべる可憐な少女。そして、僕の()を真っ直ぐ見つめ、何処か不敵めいた笑みで告げた。 「――ここからは、私のターンですよ。楓和さん?」  
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