野暮なこと?

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「――ところで、紗那(さな)さん。その……先生って、再婚のご予定とかあったりする?」 「おや、何とも野暮なことをお聞きしますね楓和(ふうな)さん」 「あ、いやそういうわけじゃなく! ……その、先生ってそういう話しないから、どうなのかなとちょっと気になっただけで」  それから、数十分ほど経過して。  何とも出し抜けな僕の問いに、何とも悪戯っぽい微笑でそう口にする紗那さん。……うん、反論の余地もないね。それに、間違っても当人のお子さんに尋ねることではないだろう。  ともあれ――先生が離婚なさったのは、もう十年以上も前とのこと。なので、流石にそろそろ新たな恋に踏み出していても自然かと思っ……うん、ほんと野暮だね。 「……ですが、そうですね……生憎、私もその辺りの事情は私も良く知らないんですよね。そして、実はそのことは私も気掛かりでして。私に遠慮しているなら、そんな必要はない――特に最近はそういった旨のことを繰り返し伝えているのですが、やはり芳しい返答は返ってこずですね」 「……お父さん想いなんだね、紗那さんは」  すると、思案の表情でそう答えてくれる紗那さん。うん、分かっていたことだけど、やっぱり良い―― 「……そうでも、ないですよ」 「……へっ?」  すると、ポツリと呟く紗那さん。そんな彼女の様子に首を傾げていると、紗那さんは淡く微笑み再び言葉を紡ぐ。 「……そうでも、ないですよ。私は、貴方が思うような良い()ではありませんから」
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