奏真先生

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奏真先生

「……また来たんだね、楓和(ふうな)くん」 「はい、奏真(そうま)先生! ……それとも、やはりご迷惑でしたか?」 「……ううん、そうじゃないよ。ただ、忙しいんじゃないかと心配になってね」 「いえ、でしたらお気になさらず。僕、めっちゃ暇ですから!」 「……いや、まあそれはあまり誇らしげに言うことでもないと思うけどね」  肌寒い風が頬を撫でる、ある冬の日のこと。  檜の香りが仄かに漂う心地の良い書斎にて、些か興奮気味に話す僕に淡く微笑む奏真(そうま)先生。丸眼鏡の似合う、知的な雰囲気漂う秀麗な男性だ。  そして、そんな素敵な彼は嘗て、僕の担任の先生だった。四年前――当時、高校一年生だった僕のクラスを受け持ってくれていた。    
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