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風
風が頬を撫でる。
橋に独り。
下を向けば
真っ黒な川が手招きしている。
耳にさしたイヤホンから
ベタなラブソングが流れる
昨日まで愛を送りあっていた人に
愛の言葉を囁くことはもう無いだろう。
もうできなくなってしまった。
私より高いところで
世界を見るようになった彼は
今も私に、
言葉を送り続けてくれているのだろうか。
自然に視界がぼやけて
この世界の全てが曖昧になる。
私の存在もこのまま曖昧になって
彼と同じ高さまで、
登っていけたらいいのに。
登る前にまずは落ちなくちゃいけない。
ゆっくり目を閉じて
強く吹く風に身を躍らせた。
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