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「え?…それは、申し訳ない事をしてしまいましたね…」
「いいよ。おじさん疲れてるみたいだったから、梅干しは疲れに効くってお母さんが言ってた。それに中に何も入ってなくてもごま塩のおにぎりは美味しいんだよ」
そう言って男の子は具なしのおにぎりにぱくついた。私も残りのおにぎりをいただく。何だか心が温かくなるのを感じながら。
気が付くと辺りは夕暮れ、先ほどまで青空だったはずなのに…。
街を照らす茜色があまりに美しく、思わず見とれてしまい自分が何を目的にどこに向かっているか、もうどうでも良くなって来た。
男の子は相変らず私の隣に座ったまま夕日に照らされた街をじっと見ていた。
「…そろそろ、帰らないとお家の方が心配しませんか?」
「家に帰っても誰もいないから」
前を見たまま男の子が言った。
「お母さんも働いているのですね?」
「うん、ウチ、母子家庭だから」
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