夕暮れの街で、君と。

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 意外そうな顔をする和樹。私はうなずく。 「真那がおにぎり食べたいとか言うと何か不思議な感じ…」  和樹が肩をすくめる仕草をする。 「そうですか?割と好きですけど、梅干しとか」  ふーん、と和樹。 「それじゃ俺が絶品おにぎりを食べさせてあげるよ。子供の頃から握ってるからね、完璧な三角形に加え絶妙な塩加減で驚くほどのうまさだよ!」  私は夢の中であの子が渡してくれた少々いびつなおにぎりを思い出し、ちょっと切なくなる。  そう言えば…と和樹が言った。 「おにぎりで思い出したんだけど…」  はい?と私。 「子供の頃、夏…いや秋だったかなあ、公園のベンチでおにぎり食べてたら、隣に座ってたおじさんがスッゴい羨ましそうに俺のおにぎりを見るんだよね」 「え?」 「今だったら通報されそうな話だけど、その時はなんか俺、おじさんが気の毒になっちゃって、持ってたおにぎり一個あげたんだ。そしたらお礼に自販機でウーロン茶を買ってくれた」
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