夕暮れの街で、君と。

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 私は内心驚いた。和樹が今話しているのは私が見た夢の内容に完全にシンクロしている…。 「そのおじさん…どんな人だったか覚えていますか?」 「あんまり覚えてないなあ。ただとても疲れてるカンジだったかな。スーツを着ていたような気がするので、外回りの営業マンだったのかも」 「…なるほど」  どういうことなんだろう?私が夢の中で会ったあの子は実は数十年前の和樹で、彼が子供の頃に公園で会ったというおじさんは私だった?  何だかタイムリープもののSF小説みたいだ。不思議な話ではあるが、理屈ならいくらでも付けられる。例えば、お互い酔っているときにその話をして忘れてしまった、とか、和樹から断片的に得た情報を私の脳が勝手に再構成し、夢として見せただけとか、全くの偶然でそんな夢を見ただけかもしれない…とか。  だけど、あの子のくれたおにぎりがとても美味しかったこと、街を見下ろす横顔がひどくさみしそうだったことなどが今もリアルによみがえる。そして最後に見せてくれた、夕日に照らされた嬉しそうな彼の笑顔…。  
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