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「こんちはー!」
と笹河家は夕方前になると一気に慌ただしくなる。
この家の専業主婦、笹河しげみは小学三年生と、一年生の2人の息子の母親だ。
下の子が幼稚園から小学校に進級したことで少しは楽になった、と思えばそうではなかった。
自分に似た長男よりもパリピで陽キャな次男は入学して一ヶ月して友達もすぐ作り、学校帰ってからすぐに友達を連れてくるようになった。そしてその友達とさっきまでしげみがリラックスして刑事ドラマを見ていたリビングを占有してゲームを始める。
「健二、ちゃんと宿題やれるの?」
次男健二の友達のある前で投げかける言葉ではないが、こうやって友達を連れて帰って来たり児童館に遊びに行ってしまうと宿題がおろそかになる。
晩御飯食べたら眠いと言いながらしげみが激を入れないと宿題をしなくなり、次の日の朝登校ギリギリまで宿題をやり終えて……そんな日々。
「わかってるよー。ちゃんと夜にやるからー」
「そんなこと言いながらもやらないでしょ!」
としげみはつい声を荒げてしまう。健二の友達たちはケラケラ笑う。もう怖がることもなく、しげみの怒りを笑っている。
その横には今まで真面目に宿題をやっていた長男の隆一も一緒に笑うほどだ。隆一までも宿題を先延ばしするようになった。
それに対してしげみはため息をつく。
「そんなに怒るなよー、たく。母さん、父さんやばあちゃんにネチネチ言われるから僕らに勉強させるんだろ? わかってんだぜ」
しげみはハッとする。
そう、しげみの夫である玲太と同居はしてないが近居の義父母たちは過干渉で子供たちに勉強しろ勉強しろとうるさい。
特に義母は
「うちの玲太は塾に行かなくても賢い。何も言わなくても勉強する子だった。勉強しなくて賢くない血は我が家系にはいない、しげみさんあんたの家系の血だよ!」
と口ばかりで特に勉強を教えない。
玲太もしげみの味方をせず仕事が忙しいを理由に逃げてばかりで、しげみに何も聞かず辛く当たるばかり。
その様子を子供たちは目の前で見ている。しげみだって起こりたくはない。だが声を荒げないと、いや荒げても子供たちは聞いてくれないのだ。
「あともう一回、宿題を先延ばしにしたら許さないからね!」
しげみはそれと他にも悩みの種がある。
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