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ストイックな関係です
それからの私の高校生活はというと、犬飼瑠衣利に懐かれたと形容するのが1番手っ取り早い。気が付くと、隣にいる。彼女が私の隣にいると、他の女子生徒はあまり近づいてこない。多分、外山さんや花園さんみたいに学校から消されるからだろうか。まぁいいけど。
「筒香さんのこと、美来と呼びますから、私のことは瑠衣利と呼んでください」
いつの間にか、ファーストネーム呼びの状況になっていた。これまでにも私のことを下の名前で呼ぶクラスメートはそこそこいたけど、さすがに瑠衣利のことを呼び捨てに出来る強者は私以外には、ついぞ在学中は現れなかった。
私はいつの間にか、生徒会の役員に推薦されていて、当確が確実になる頃には瑠衣利も役員に名を連ねていた。そのおかげか部活に入らずとも、そこそこ学生活動は充実していた。犬飼家にはそれからも何度かお邪魔することもあり、私が犬飼家に行くときは必ず兄の結仁がいた。犬飼家のお母様にお会いすることもあった。頭のてっぺんから爪の先まで値踏みされ、いくつかの面接試験みたいな質問を受けた後も犬飼家に呼ばれることはあったから、瑠衣利のお友達認定は得られたのだろう。あの時はちょっと怖かった。これまでにも面接試験みたいなものを経験したことはあったけど、犬飼母を前にした緊張感は半端なかったから。
瑠衣利の家での様子は学校とはちょっと違う。兄の結仁さんの前では様子がもっと違う。ツンとしたお人形さんに現れる揺れる感情。結仁さんのどこがいいのか相変わらず私にはよく分からないけど。でも二人の間に流れる空気は鈍い私にも分かる。兄妹を超えるそれ。犬飼のお母様とちょっとお話をするときがあって、彼女がちょっとだけ口を滑らせたことがあった。瑠衣利と結仁さんには血縁関係がないんだということを。だからと言って、私がどうこう言う立場ではないから、スルーすることにしたけど。
私は犬飼家ばかりに気を回している状況ではなくなっていた。大学に合格したタイミングで両親の離婚が正式に決まったのだ。ウチの両親がヤバいんだろうなぁとは思ったのは大分、昔だ。あまり家に帰らない父。滅多に帰ってこないから父親に懐けない私。「美来ちゃん」と父はいつも私を呼んだ。だから苦手なんだよ、そう呼ばれるのが。
二人は私が成人になるまでは離婚を踏みとどまっていたらしいけど、法律上18歳に成人年齢が繰り下げられたから2年早めることになったらしい。法律改正のせいで私は独立のタイミングを早められる結果になったのだ。
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