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莉々は友達
一緒に暮らすようになれば、どうしたところでプライベートを目にする機会は増える。
犬飼結仁はモテた。腹黒いところはあると思うけど見た目は爽やか、人あたりもいいらしい。私がお世話になっている2年間で何人の女性と付き合ったのか?ただ特定のと言われるとそれはいなかったような。一方で瑠衣利もあれだけキレイなのに特定の彼氏はいなかったような気がする。勿論、普通にデートはするんだけど。彼女のデートの相手というのが男を見る目のない私でもあれはないな、という勘違い男ばかり。
「もっと瑠衣利に見合う男性がいそうなものだけど」
「私を誘ってくださる方は皆似たような感じなのよね、なぜかしら?」
彼女の場合は男性からすれば高嶺の花になり過ぎて、普通の男性が近づいてこなかったのか。根拠のない自信を持ち合わせた男しか彼女に声をかけてこないという状況に彼女の将来を少しだけ心配した。
瑠衣利とは一緒に暮らしてはいたけど、別にお互いの部屋を訪ねて恋バナをしたりとか、そういうのはなかった。高校時代と違って、お暗示時間を同じ教室で、という制約もない。お互いのプライバシーを尊重していたし、大学も違う。生活時間も微妙に合わないのも大きかった。私が本格的な一人暮らしに向けて、バイト三昧だったせいもあるかもしれないけれど。
それに私は大学に入ってから、親友と呼んでもいい友達が出来ていた。瑠衣利も勿論、友達ではあるけれど、お嬢様だし、微妙に生活感覚が合わないこともあって、もっと気楽に話せる友達が欲しかったのかもしれない。それが佐久間莉々。後で知ったけど、彼女は瑠衣利の中学までの友達という奇特なキャラの持ち主。
佐久間莉々とは大学の語学のクラスがたまたま一緒だった。瑠衣利から中学の時の友達が私と同じ大学にいるとは聞いていたけど、人数も多いから会うこともないんじゃないかと名前もちゃんと聞いてなかったし。
莉々と初めて出会った語学クラスだった。語学の席がたまたま近かったから莉々が声をかけてくれたのが始まり。彼女だけじゃなく、テスト前の助け合いで何人かの男子生徒とも仲良くなった。その中に莉々がいいなと思っている男子がいて、その彼と私が同じサークルだったりして話す機会が増えていった。友達になるきっかけなんて、いつだって些細な偶然から始まるものだ。莉々とは最初からなんとなく波長の合ったのだ。それって、後から考えれば瑠衣利の友達でいられるという何らかの共通項が莉々と私にはあったということだろうか。
莉々以外にも語学クラスには女子はいた。でも莉々以外の他の女子とはあまり親しくならなかったんだよね。というのも、男受け間違いなしのあざとい系女子が語学クラスを支配してたからかな。彼女とは最初から合わなかったなぁ。話はするんだけど、女子だけでいると、やたらマウントをとりたがるタイプだったし。男子生徒からすれば、私と莉々はモブキャラだったんだろうと思う。でも、テスト前だけ彼女は私たちに近づいてきたんだよね。分かりやすぅ。
「彼女を見てると、思い出しちゃった。私、中学時代にも結構な美人がいてさ」
「私も高校時代にいた」
「その子といると、いつもわたしなんか引き立て役になっちゃうっていうか。その子は個性的ではあるけど、あざといっていう感じではなかったんだけど」
「そういうの、あるよねぇ」
「致命的だったのがさ、私がいいなって思っていた人が彼女と付き合うために私と仲良くしてくれてたことが判明したときがあって」
「それちょっと辛いね」
「なんだかんだで、彼女と一緒にいるのがイヤになってきて。それに学校の雰囲気も合わかったからさ、せっかく中高一貫だったのに高校から他の学校行ったんだよね」
「私も中高一貫だったけど、どこだったの?」
彼女が口にした学校は私の母校で、そこから派生的にその美人が瑠衣利であることにたどりつき、私たちの友情は深まっていったのだけど。
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