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社会人になりました
私と莉々の友情は社会人になっても続いていた。
「莉々もとうとう結婚かぁ」
「どうにかね。27だし。で、美来はどうすんの?相変わらず、あの弁護士の不倫男と付き合ってるの?」
大学時代のあの語学クラスから付き合い始めていた莉々はそのまま交際が続き、めでたく結婚が決まったのだ。一方で、私は妻子ある男性と交際中。なんだ、この違い。どこで私は道をそれてしまったのか。
「実はさ、奥さんから慰謝料請求されて、さすがにいい加減別れようって思ってる」
「慰謝料?」
「奥さん、同業者みたいで。会社は違うけど」
「まじかぁ。結局、何年付き合ってた?」
「3年」
「美来ならもっといい男がいると思うのになぁ。よりにもよって何で不倫なのよ。1番いい時期をもったいない」
「24歳から27歳がいい時期ってことはないだろうけど。実際、私にはそれほどのいい時期とは思えなかったし」
「揺れる時期ではあったよね?」
司法試験を諦めたのに、就職したのは法律事務所で。これは私が諦めきれなかった証左なのかもしれなけれど。挙句がアシスタントについた上司と不倫だもんなぁ。目的地を見失い、遭難した挙句に大波の中を進む難破船?
「揺れる時期だったのは認めるんだ」
私は苦笑いだ。
「今日は莉々のお祝いだからさ。私の話はいいよ。結婚式はやるんでしょ?」
「一応記念だからさ。私はどっちでもよかったんだけど」
「佐藤君、莉々のウェディングドレス姿、楽しみにしてるんじゃない?大好きだもんね、莉々のこと。始まりは莉々からだったのに」
「どっちの方が先に好きだったとかどうでもいいのよ。ちなみにウェディングドレスじゃなくて白無垢を着る予定だし」
「お色直しは?」
「一応ドレス?」
「いいじゃん。でもこうやって飲むのは難しくなるなぁ」
「なんでよ?」
「だって佐藤さんに悪いし」
「問題なぁし」
莉々はそう言ってくれるけど、さすがに今みたいなわけにはいかなくなるよね。週1で女子会開催ってわけにはいかないでしょ?
「瑠衣利は結婚すること連絡してあるんでしょ?」
「うん、返事待ち。そういやぁ、瑠衣利にはお兄さんがいたよね?」
「いたいた」
瑠衣利の兄、犬飼結仁さんは私が知っている限り、女遊びがお盛んな人だった。その彼が大学卒業から間もなく結婚を決め、家を出ることが決まり、ほぼ同じタイミングで犬飼のご両親の帰国したこともあって、予定通り私は大学3年からは一人暮らしを始めたのだ。それが今も続いている。
大学入学当初は弁護士になった先輩を追って、司法試験を頑張るも結果が出ず、就職活動への切り替えがうまくできずに、結局未練もあったのか法律事務所に就職。上司だった男性と不倫するに至る。
友達が幸せになるのは嬉しいけど、一方で私の人生、大丈夫かなって不安になるお年頃なのです。だって、莉々が会うたびにキラキラしていくから。彼女を1番に愛してくれる人がそばにいる、それが純粋にうらやましかった。
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