莉々の結婚式

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 莉々の結婚式も終わり、自分の生活のためには普通に会社員生活を送らなければならない。溜息をつきながらも、ルーティンを守る。それが今の私に残された道、なんて。  そんな息が詰まりそうな午後、知らない電話番号がスマホに表示された。誰だろう?もしかして莉々の結婚式の2次会でお話した誰かだったりする?連絡先交換した人は一応登録しているはずだけど。なんか面倒そうだから、スルーしてしまおうかとも思ったのだけど、呼び出し音になんか圧を感じて、ついつい出てしまった。 「筒香美来さん?」  この声に聞き覚えがあるようなないような。まずは名乗れや、と心の中で叫んだタイミングだった。 「犬飼です。犬飼結仁。瑠衣利の兄の。覚えてますか?」  犬飼結仁?なんで?彼と連絡先を交換した記憶はない。瑠衣利から私の電話番号を聞いたんだろうか? 「覚えてます。勿論。どうしたんですか?あっ、もしかして瑠衣利、生まれたの?」  瑠衣利が妊婦だということを聞いていた私は、まずそこから確認した。 「それはまだ。3ケ月くらい先かな」  じゃあ、なんで私に電話をする必要がある? 「ですよね。何かありました?結仁さん、私の番号なんて知らなかったでしょう?」 「瑠衣利から教えてもらいました」  やっぱりそうか。 「何かあったんですか?電話で連絡って、何か緊急案件かなにかですよね?」 「緊急案件というか。ちなみに瑠衣利は元気ですよ。その瑠衣利から美来ちゃんが転職先を探していると聞いたので連絡してみました」  私、瑠衣利にそんな相談したっけ?いやしてないよな。 「莉々さん経由で聞きました」 「なるほど」 「これからあなたにマッチングしそうな転職先の情報送ります。気に入ったら私に連絡ください。先方も一応面接みたいなものをしたいと言っているので。あなたの大体のキャリアは送付済で、先方はあなたに会ってみたいと」  なんだ、この手回しの良さは。そうは思ったけど、これはこれで条件次第ではチャンスだったりするんだろうか? 「とりあえず会社の情報を見てからでいいですか?」 「給与やその他の雇用条件も送っておきますから。多分、今の仕事より条件はかなりいいと思いますよ」  自分の要件だけ言い終えると、あっさりと結仁さんは電話を切った。もれなく会社のホームページのリンク先と雇用条件が送られてきた。彼って、仕事の早い人だったのだろうか? 「めっちゃいいじゃん?」  送られてきた情報に私は既にその気になっていた。  転職サイトとはえらい違うし。仕事内容も面白そうだったから。  やるじゃん、結仁さん。
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