プロローグ

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 犬飼結仁には義理の妹の瑠衣利がいる。両親が連れ子同士で結婚したから、血のつながらない兄妹だ。血のつながらない兄妹、これだけでどれだけの物語が紡がれてきただろう。  その未来にハッピーエンドは待っているのか待っていないのか。彼らのケースは待っていなかった。  結仁と瑠衣利の両親である犬飼夫妻は二人の恋愛に真っ向から反対した。両親のプライオリティは家族になることを第一義にしていたから。  反対されれば逆に盛り上がりそうなものだけど、二人は自分たちの気持ちを抑え込むことに決めたらしい。そこは従順というかなんというか。  そしてお互いのことを想いながらも、グッドルッキングな兄妹はそれぞれ2番目に好きになった人と結婚した。  「結婚するなら2番目に好きな人がいい」なんて、昔聞いたような気もするけど、それは人によるよね。この兄妹の結果はどうなったか。二人のその後は両極端にふれることになった。  妹の瑠衣利は今でもそこそこ上手くやってるのに、兄はどうやら失敗したらしい。兄の結仁の方が、瑠衣利への未練を断ち切れなかったということか。だから現在、彼はシングルライフを満喫しているのだけど。女性との噂は昔から絶えなかったから、別に付き合う人に困っているわけじゃなさそう。でも離婚してからはローテーションが昔より早くなっている気がするって瑠衣利が言ってたし。  バツイチになった彼に周囲からのプレッシャーが強くなってきているという話も聞いていたから、それを回避するための手段を講じたくなったのか。  それで私って、あまりにも安直過ぎないか。 「どうかな?」 「あり得ない」  そんな不毛な会話がなおも続いていた。
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