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出会い
結仁さんとの出会いのきっかけは、友人である瑠衣利のお兄さんだったから。そこに運命とかを感じたことはない。
瑠衣利はさっきも言ったけど、分かり易い美人で、本当にお人形さんみたいなんだよね。日本人形というより西洋人形だけど。外国の血がどっかで入ってない?と聞きたくなるんだけど、純粋培養の日本人らしい。一般的に言って、同じ女子なら隣にいるのを避けたくなる。彼女のそばにいる女子はどう見てもお付きの召使かなにかにしか見られないだろうし、そもそも存在を認識されない可能性が高い。そのせいか、加えて女子からはやっかみもあるのか、学校では女子から距離をおかれていた。それをきっちり本人も自覚している。いつ均衡が破れてもおかしくない緊張関係が確立していた。
そして高校に入学して間もない頃、その均衡が崩れたのだ。
その日は教室で自由学習が認められていた日だった。数人残っていた生徒もパラパラと帰り始める。購買に買い出しに行く生徒もいて、たまたま教室に残っていたのは私一人だった。
目立たないことを自分が1番生きやすい方法と学んでいた私は、クラスの多くの女子が瑠衣利を遠巻きにしながら、チャンスをうかがっているのを何も言わずに他人事のように見ていた。面倒事には拘わらない、これが私の人生の守らなきゃいけないポリシーみたいになっていたから。それに私は他に知りたいことがあったし。
教室に犬飼さんが戻ってきた。先生から提出物のことで呼ばれていたから。自分の席に戻った犬飼さんが周囲を見回している。
あるわけないのに。
何度も周囲を見回す彼女に、これから他の生徒が戻ってからの展開が面倒くさくて、私は投げ捨てるように彼女に言っていた。
「鞄なら多分、プールに沈められてると思うよ」
私は机の上の教科書に目をやったまま、彼女の方を見ないで呟いた。
彼女が教室から出ていく。その様子を笑いながら、購買部から戻ってきた女子生徒が意地悪そうに眺めている。
私も同罪だな。そう思った私は「私も飲み物、何か買ってくる」
そう言って教室を出た。教室を出た私は、犬飼さんを追いかけて走り出したいのを必死に抑えていた。教室からの視線が届かなくなるコーナーを曲がった途端に走り出していた。
「最低」
私はプールの方向へひたすら加速をつけて走っていったのだ。
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