クリスマスの秘密9

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クリスマスの秘密9

「多くの者が、大人になるにつれ純粋な部分を失っていく。世界を知り、人間社会を知っていくにつれ思考はより現実的に、制約と前例と科学と――多くの本を並べ物事を受け入れていく。じゃが、そうでない者もおる。子どものように自分の世界を持つ真っすぐな者」  するとサンタさんは上半身ごと私の方へ視線を向けた。 「そんな光に満ちた者達が――君のような子が儂らには必要なんじゃ」  サンタさんは力強い言葉と共に真っすぐと私を指差した。  それを会ってから今まで何度しただろうか、でも言葉をイマイチ理解し切れず私は首を傾げた。 「では世界の真実を一つ教えてやろう」  だけど私のそんな反応を想像通りだと言うようにサンタさんは話を先へ進めると、手綱で雪舟を加速させた。馴鹿は大きく回るとそのまま突っ込むように月へ向かっていく。  そしてサンタさんが何かを投げる動作をすると――眼前へ巨大化したサンタ袋が現れ、こっちへ向け大きく口を開いた。馴鹿は何の迷いも無くその袋の中へ。  すると星の無い夜空に包み込まれたかのように辺りは真っ暗となり数秒。すぐに外へ出たかと思ったが、周りの景色は何も変わらない。強いて言えば雪が多めに降ってるぐらいだ。  何が変わったのか探そうと辺りを見回している間に、雪舟は降下していき屋根へと下りた。
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