クリスマスの秘密14

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クリスマスの秘密14

 しかしサンタさんは落ち着き払った様子でランプスの群れへ体を向けると、そのまま視線を星空へと向けた。 『今夜も星が綺麗じゃな』  悠長にそんな事を呟きながら白い手が空へと伸びる。星空を掴もうと伸びた手に余り力は込められておらず少し握った状態。  すると指先は星へ反応するように小さな光を放ち始めた。煌めく希望の光、そう表現したくなるような綺麗な輝き。 『うん! キラキラしてて凄かったよ!』  そんな中、私の興奮気味の返事が空気を読まず聞こえる。  一方でサンタさんはその手を、星空を撫でるようにそっと下ろした。指先の光が微かに尾を引きながら――でも手が下りても世界は微動だにしない。それとは相反し、ランプスの群れは先頭部分が動き始め大きな波としてサンタさんへ襲い掛かろうとしていた。  だがその時――私は確かに見た。星空を駆ける流星群を。競争でもしているように尾を伸ばし流れていく星の群れは、戦争でさえ止めてしまいそうな程に美しく、物足りない程にあっという間。こんな状況だというのに私はもっと見たいとさえ思ってしまっていた。  すると次の瞬間。星空からはそんな私の期待に応えるかのように、無数の光が降り注ぎ始めた。光は先頭からなぞるようにランプスの群れを包み込んでいき、辺り一帯を昼間のように照らした。  空から雨のように線を描く光。それは正に星空から振ってきた流星のようで、視界一杯に広がる光の柱はとても美しい光景だった。これがランプスへ向けられたモノだという事をすっかり忘れてしまう程にとても美しく。  でも直ぐに尾も地面へと降り、先程の光は幻想のように消え去った。花火みたいにあっという間の出来事が過ぎ去ると、そこには何事もなかったと言わんばかりにただのホワイトクリスマスに染まった街並みが広がっているだけ。 『開けてごらん』  それからプレゼントを取り出したサンタさんが幼い私の前へ行くとその後は私も知ってる光景だった。
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