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忘れられない想い出2
――シャン、シャン、シャン。
でもその時。私は確かに聞いた。この季節になると耳に沁み込む程に流れて来る鈴の音を。
それを聞いた瞬間、呪文のように眠気は一気に覚め私はすっかり興奮状態。
「サンタさん!」
私はベッドを下りると無我夢中で家の外へと出た。暗い空から少し多めに降り注ぐ雪。そんな街灯だけが照らす白銀の街は驚く程の静寂に包み込まれている。
でもそこには居た。確かに居た。お父さんよりもまん丸としたお腹を抱えた大きな体とそれを包み込む赤を基調とした服。雲のような白髭と祖父のような優しい容貌。
私の前には思ってた以上に大きなサンタクロースが真っ赤な雪舟越しに立っていたのだ。それに私が何人も入りそうな袋と九匹の馴鹿も。
「サンタさんだ!」
胸の中にあった興奮を噴火させる様な大声で私は叫んだ。精一杯に伸ばした小さな指も一緒に。
そしてそんな声に顔を上げたサンタさんは、私の姿を見ると一瞬だが瞠目した。ほんの数秒、世界の時が止まる。サンタさんも私も、揃ってこっちを向いた馴鹿も――みんながみんな動きを止めていた。
「ほっほっほっ」
するとその沈黙を破りサンタさんは私の想像通りの笑い声を上げた。そしてその巨体を揺らしながら私の目の前へ。
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