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クリスマスの秘密17
「儂らはいつでも君を待っておるからの」
「……はい」
取り敢えずそう返事をするしかなかった私は少し名残惜しさを感じながら雪舟を降りた。その後、最後にザ・サンタクロースの組み合わせを拝んでおこうと振り返った。
じっくり全体を見ていると、とある欲望が私の中で生まれそれに突き動かされるがまま声が口から飛び出していた。
「あの」
サンタさんは問いかけるような視線を私へ向けながら続きを言うのを待っている。
「最後に馴鹿さん撫でていいですか?」
「それは本人に訊いてみるといい」
ほっほっほ、と笑ったサンタさんがそう言うと私は雪舟の前の馴鹿さんの元へ。近くで見ると思ったより大きい。
「馴鹿さん。触らせて貰ってもいいかな?」
そう尋ねると馴鹿のまん丸い目が私を見つめた。じぃーっと愛らしくも凛々しいその顔を見ているだけでも癒される。しかも頭上に生えた角は立派でカッコいいときた。
「私の名前はルドルフだ」
「えっ?」
その声は確かに馴鹿の方から聞こえた。でも私の中にある常識がそれを素直には受け入れてくれない。
「今、喋った……?」
「天下のサンタクロース様が乗った雪舟を引いて、空も走れるんだ。今更喋ったぐらいで驚くか?」
すると目の前の彼に引き続き、隣の彼も雑な口調で少し笑いながら言葉を発した。一瞬、自分の頭がバグってしまったんじゃないかとさえ思ったけど――確かに動く口に合わせ言葉は聞こえてた。
「馴鹿さんではなく、ルドルフだ」
「あっ……すみませんでした」
「俺様はダッシャー」
「よろしくお願いします」
まだ頭の整理は追い付かず、どうしていい分からないまま私はただただ言葉に反応して軽く頭を下げていた。
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