クリスマスの秘密18

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クリスマスの秘密18

 するとそんな私の方へルドルフさんはお辞儀でもするように顔を近づけて来た。更なる追い打ちで何が何だか分からない。 「爪には気を付けてくれ。それと余り激しくはしてくれるな」 「え?」 「珍しいな。ルドがじいさん以外に触らせるなんてよ」 「どうやらルドルフの許可が下りたようじゃな」  すっかり忘れてしまっていたが、最初に触らせて欲しいと言ったことへの答えらしい。サンタさんに言われ遅れて気が付いた。 「それじゃあ、失礼します」  私は会釈をしてからそっと手を伸ばした。まずは指先がその感触と捉え、それから掌全体へと広がっていく。柔らかな感触がありつつも少し硬いのもあって――でも全体的に温かい。どこか優しくずっと触っていたくなるような、どんどん幸せな気持ちが溢れてくる。  でも確かに言われてみれば今更サンタさんと一緒にいる馴鹿と会話が出来たとこで不思議じゃないのかも。なんて頭の隅でさっきの戸惑いが雑に処理されるぐらいには、それは至福の瞬間だった。 「はぁー。最高……」  そしてついつい私は頬擦りをするように抱き着きながら撫でていた。  でも余りにも長い間触り続けるのも失礼かと思い、名残惜しさを堪えつつその感触から離れた。 「ありがとうございました」  最後はしっかり頭を下げてお礼を忘れない。 「うむ。悪くは無かった」  そう言われると何だか撫でるのに自信が出て来るような気がする。 「それじゃあ先程の件、考えてみてくれ。儂らはいつでも君を待っておるからの」 「はい。まさかこうしてまた会えるなんて。光栄でした」 「体には気を付けるんじゃぞ」  サンタさんは言葉の後に手綱を振るった。 「それと良い子でな」  ほっほっほ、そして笑い声と共にサンタさんは夜空へと消えて行った。
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