クリスマスの秘密19

1/1
前へ
/35ページ
次へ

クリスマスの秘密19

「私、サンタさんに……」  改めて一人になってみると先程までの出来事から現実味が薄れるような感覚に襲われたが、それでもやっぱり確かに会えたんだって自信を持って思える。あの笑い声も、空を駆けた感覚も、ルドルフさんを撫でた感触も――全部が鮮明に残ってて、私に特別な体験をしたって語り掛けてくる。自分一人だけ世界の秘密を知ったような気がして何だか特別な気分だ。 「美沙? そんなとこで何してるの?」  すると一人余韻に浸っている私を後ろからお母さんが呼んだ。振り返ってみると財布を手に持ったお母さんが丁度、家から出てきたとこ。 「今、帰ったとこ。遅くなってごめんね」  すっかり暗くなってるし、駅から今までよく考えれば結構な時間が経ってるはず。そう思って心配させたかもしれないと謝ったんだけど、現実は違った。 「何言ってるの? いつもこれぐらいじゃない。友達と遊びに行く日の方が遅いわよ」  私はスマホを取り出して時間を確認してみた。確かに学校が終わって真っすぐ帰る時と変わらない。だけど駅で気が付けば夜になってたし、それからサンタさんと居たから時間はもっと遅いはず……。なのにスマホは何事も無かったって言うみたいな時間を示してる。 「お母さんちょっと買い忘れ買って来るから。入ったら鍵閉めてね」 「……うん」  まだ納得はいってないものの私は返事をするとお母さんと入れ替わる様に家に入って行った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加