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忘れられない想い出3
「私ね! 良い子にしてたよ! 良い子にしてた!」
「ほっほっほっ。うむ、感心感心」
頷きながらしゃがんだサンタさんだったけど、それでもまだ私を見下ろしている。
そして大きな大きな手を私の頭へ伸ばした。
「ならちゃーんとプレゼントをあげないといけないの」
その言葉に私は飛び跳ねて喜んだ。上の方を一瞥するサンタさんの前で私は本物に会えたのとプレゼントが貰える嬉しさで一杯だった。
「でもこんな時間に起きてるのとお外にいるのは感心せんなぁ」
「そ、それはね……。……ごめんなさい」
言い訳すら思い浮かばなかった私はただしょんぼりと謝る事しか出来なかった。
でもサンタさんの大きいのにどこまでも優しい手は私の頭を慰めるようにぽんぽんと撫でた。
でもクリスマスには似合わない曇り顔を上げた私を迎えてくれたのは、白髭に埋もれながらも柔和な笑みを浮かべる表情。
「ちゃんと謝れるのは良い子の証じゃ。それなら――」
するとサンタさんは言葉を途切れされると、少し顔を逸らし振り向かずに横目で後方を見遣る。正確には気にしている様子だ。
でもすぐに私へ視線を戻すと笑みの続きを浮かべた。
「少し目を瞑ってごらん」
「うん!」
私は言われた通り目を閉じた。眠るみたいに視界は真っ暗だけど、気持ちはずっと弾んでいる。
それを確認したんだろうサンタさんの手が頭を離れ、立ち上がる雰囲気を感じた。雪を踏みしめる音。その後は少し静寂が続いた。
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