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エクスレイ日本支部4
それからどれぐらいの時間がたったのかは分からない。だって気が付けば私は眠ってしまっていたのだから……。
「着きましたよ」
起こされた私は寝惚け眼で窓の外を覗いてみる。でもどこの窓からもフロントでさえも、どこから見ても外の景色は一面の白銀世界。疎らに生えた木と降り積もった雪だけがそこには広がっていた。
「ここですか?」
ただ一つ、目を引く物があるとすれば停車した近くに建つ一軒の山小屋。ボロボロで今にも崩れそうな廃れた山小屋がそこには辛うじて建っているだけ。
「もう既に敷地内ですよ」
そう言って先に降りた安居院さんは、私のキャリーケースを手に何の迷いも無くその山小屋へと足を進めた。私も少し遅れながら荷物を手にその後を追い、一緒に山小屋の中へ。
でも中は外観から想像できるように何も無く狭いだけのボロ屋だった。唯一あった家具は小さなテーブル。触れただけで砂となって崩れてもおかしくない程にボロボロだ。
「あなたも覚えておく必要がありますよ」
安居院さんはそう言いながらそのテーブルへと足を進めた。そして天板の裏の方へ手を伸ばし、掌でべったりと触れた。数秒の間そうした後、テーブルから離れた安居院さんは私の隣へ。
すると突然、今正に立っている床が動き出し私達は沈んだ。下へと滑らかに降りていく床。頭上では横から新たな床が蓋をしたが、床の端に埋め込まれた穏やかな光が暗闇を照らしている。
「こ、これは?」
「秘密の入り口というやつですね」
映画のような仕掛けに興奮しているとどれぐらい下へ行ったのか、壁の一面が左右へと開いた。そこには人ひとり分程度の幅しかない一本道が真っすぐ伸びているだけ。白一色のそこは全体的に明るいが、何より狭い。
「ここ通るんですか?」
「大丈夫ですよ。私の後に続いて下さい」
キャリケースを引きながら平然と歩き出す安居院さん。狭い一本道を歩くのはどこか抵抗があったけど、仕方なく私もその後に続く。もし私が極度の閉所恐怖症なら通れなさそうな道を少し行くと、待っていたのは行き止まり。
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