忘れられない想い出4

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忘れられない想い出4

「まだ?」  耐えきれず私はそう尋ねる。 「儂が良いと言うまで開けちゃ駄目じゃよ」 「うん分かった!」  もしサンタさんの言いつけを破ったら悪い子になってプレゼントが貰えなくなる、なんて気持ちが無かったと言えば嘘になる。でもその時は本当に純粋な――何か起きるか分からないワクワクとした気持ちで待っていた。  でもそこから聞こえて来た音は少し不思議なモノだった。サンタさんや馴鹿が歩くにしては大きく、雪舟やプレゼント袋から鳴るにしては少し乱暴な音。  そんな音に私が小首を傾げていると、再び静けさがやってきた。 「今夜も星が綺麗じゃな」  サンタさんは突然、そんな事を呟いた。私に言ってるには小さな声。でも聞こえた声に反応するのが子ども、なのかも。私は起きてからはサンタさんに舞い上がり空なんて見てなかったけど、寝る前に家族で見上げた星空を思い出していた。それは確かに子ども私でさえ声を上げて喜んでしまう程に綺麗だった。 「うん! キラキラしてて凄かったよ!」  私はそれを瞼の裏に見ながら両手を精一杯動かしながら答える。  すると少し間を空けて大きめの音が何度か鳴り響いた。遠くも近くもない場所から聞こえた突然の音で体は僅かに跳ね上がる。同時に若干の不安が込み上げて来た。
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