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エクスレイ日本支部11
「と、兎に角ちゃんと訓練もあるので大丈夫ですよ。それじゃあこれをどうぞ」
そう言ってナナさんはスマホを差し出した。
「機関員に支給されるスマホです。他の機関員との連絡を含め色々と必要になるのでなるべく手元に置いておいてくださいね」
「はぃ」
渋々とスマホを受け取った私は顔を上げる事すら出来ずにいた。
「それと本日の十五時から特殊戦闘部の入隊式がありますので、五階にあります第一訓練室までお願いしますね。支部内のマップはそのスマホにあるので、それを見るか誰かに訊いてみて下さい」
「はぃ」
「それじゃあ何か訊きたい事とかありますか?」
「いぇ」
「もし後で思い付いたら気軽に連絡して下さいね」
「はぃ」
「それでは、ようこそエクスレイへ!」
少し顔を上げ若干の上目遣いで見てみると、ナナさんが人差し指を立て可愛らしいポーズを取っていた。愛らしい笑顔で愛らしい姿のナナさん。気が付けば私はスマホで写真を撮っていた。しかも連写で。
「そんなに連写されるとちょっと……」
無言で撮る私にナナさんは少し気恥ずかしそうな表情を浮かべるが、むしろそれは逆効果。私の指は画面へより一層くっついた。
「あ、あの……」
その言葉の後、そっと撮り終えスマホを置いた私は正座をすると和を重んじるように丁寧に頭を下げた。
「ご馳走様でした」
「お、お粗末さまでした?」
顔を上げてみれば小首を傾げるナナさん。私は疼く右手を必死で押さえ込んでいた。
「それじゃあ十五時ですからお忘れなく」
「はーい」
そして私はすっかり和みながらナナさんを手を振って見送った。
だけどすぐにさっきの事実が頭を埋め尽くすと、崩れるように地面へと両手を着け顔を俯かせた。まるで悲劇のヒロインの様に惨めに床にへたり込み、顔すらも上げれず今にも倒れそう。そんな状態のまま私は現実を受け入れらずにいた。
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