エクスレイ日本支部12

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エクスレイ日本支部12

 それからどれくらい経っただろうか。それ程かもしれないし、長い間そうしてたかもしれない。時間を確認してなかったから分からないけど、少なくとも気が付けばナナさんに言われた時間まではあと少しだった。  そしてそのタイミングでナナさんから一通の連絡が……。 「特殊戦闘部の訓練生が着る服がクローゼットにありますので、それに着替えてから入隊式へ行ってくださいね」  独り言と化した読み上げ声を部屋へ響かせると私は立ち上がりクローゼットへ。スライドして開けてみると、そこにはシンプルなデザインの動きやすそうなジャージが掛けてあった。合計、五着。その隣には無地のシャツが十着ほど並んでいる。  まずジャージの上を手に取って眺めてみる。 「手触りは……いい感じ。伸縮性もありそう。――見た目は地味だけど、結構着心地はいいのかも」  一人頷いた私は早速、服を脱いで着替えてみた。無地のシャツもスポーツ用だろう、着心地はバッチリだったしジャージもむしろ運動したくなってしまう程に良かった。 「おぉー。どこのだろう。もっと早く知ってれば家で着てたのに」  わざわざ声に出しながら鏡の前でいい感じにフィットしたジャージを細かく見てみるが、やっぱりシンプルイズベストを掲げているかのようなデザインだ。個人的な意見を言わせてもらうならもう少し色とか模様が欲しい。 「なんだかジャージ登校思い出すなぁ。あの頃は楽しかったっけ」  ほんの最近まで高校生だったのにも関わらず、私は遠い昔の事のように一人で溜息交じりに呟いていた。まるであの頃は私も若かったとでも言いたげな口調を意識して。だけど脳裏に浮かぶ記憶は余りにも鮮明過ぎる。 「ってもう行かないとか」  出来る事ならそんな風にずっと部屋に引き籠っていたがったが、そういう訳にもいかず渋々と部屋の外へ。既に憂鬱になりながらもナナさんの言葉を思い出しながらまずはエレベーターに乗り込む。それから五階へと。
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