忘れられない想い出5

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忘れられない想い出5

 だけど私の我慢の糸が切れるより先にサンタさんの声は聞こえた。 「開けてごらん」  既に胸から溢れた期待に半開きになった口の上で焦らす様にゆっくりと開く瞼。 「わぁー!」  私の目の前にあったのはサンタさんが差し出したプレゼントだった。頭上で可愛らしくリボンを結び、満天の星で彩ったクリスマス色のプレゼント箱。  それを見た瞬間、まるでこの世の幸福を一気に全部呑み込んだかのように欣喜雀躍としていた。最もそんな心に相反して体は絶景を目にしたように動けずにいたけど。 「ちゃんと明日の朝になってから開けるんじゃよ? それとちゃんとベッドに戻って眠る。約束出来るかな?」  そう言うとサンタさんはプレゼントを私から遠ざけ入れ替わり小指を差し出した。 「うん! 出来る!」  元気に答えるとその何倍もある小指と指切りを交わした。 「良い子だ。そんな良い子にはプレゼントをあげよう」  そしてサンタさんは私にプレゼントをくれた。 「ありがとうございます。サンタさん」  私は普段から母親に言われている通りにしっかりとお辞儀をしてお礼を言った。そんな私を嬉しそうに見つめるサンタさんは本当の祖父のようだ。 「それじゃあおやすみ」 「おやすみ! 私、ちゃんと良い子にしてるからまた来てね」 「次はちゃんと良い子に寝てるんじゃよ」 「うん!」  それは私の中に残るとても不思議で幸せな記憶。夢かもしれないけど、それでも色濃く残った大切な私の想い出。  ちなみに次の日、私はサンタさんから貰ったプレゼントを抱えながら目を覚ました。
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