クリスマスの秘密2

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クリスマスの秘密2

 マフラーをしてても隙間から入り込む冷気で本格的な冬を感じながら最早、目隠ししても辿り着ける程に慣れ親しんだ構内を歩きホームで電車を待つ。一番端の車両に乗りたいから待つのも一番奥の場所。どこまでも伸びる線路が見えるホームの端にあるベンチに座ってスマホに視線を落としながら待つだけ。ただじっと寒さに耐えながら――寒い。 「隣いいかい?」  するとスマホに視線を落としていたものの、いつの間にかぼーっとしてしまっていた私はその声で我に返った。遅れて顔を上げて声の方を見遣ると、そこにはコートで全身を覆い帽子を被ったおじいさんが立ってた。大柄で隙間から見える白髭が凄いボリュームの紳士的なおじいさん。  突然声を掛けられ少し驚いたが、そんな事よりも電車を逃したのかいつの間にか辺りにはそのおじいさんしかいなくなってしまっていた。冬の寒さのように静まり返ったホーム。  私は再びおじいさんへ視線を戻した。そこではニコッとした変わらない笑みが依然と私を見守っていた。 「はい……どうぞ」 「どうも」  そう言っておじいさんが慎重に座ると柔らかな表情と声に相反し重さでベンチは少し揺れた。一つ空けて隣に座ったおじいさんだったが、大きな体で距離的には殆ど半席分隣り。私はあまりこういう事はしない方が良いと思いつつも横目をやった。分かってはいたけれど改めて見ると、おじいさんはまるで某魔法映画のル〇ウスみたい。
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