クリスマスの秘密3

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クリスマスの秘密3

「高校生かね?」  すると盗み見るように横目を向けていた私へ放たれた不意打ちの声。思わず体をビクッと跳ねさせたけど、どうやら世間話でもしたいらしい。ホッと胸を撫で下ろしながら返事をした。 「はい」 「勉強に部活に遊び。青春じゃな」  おじいさんはその外見に似合う少し丸みを帯びた笑い声で小さく体を揺らした。 「部活はしとるのかい?」 「バスケをしてたんですけど、三年なのでもう引退しました」 「そうかそうか。運動は良い事じゃよ。でないと儂のようになってしまうからね」  そう言って大きなお腹を叩いて見せ笑うおじいさんは見てて微笑ましかった。同時にふと私もこのおじいさんと同じ年齢になった時にこうやって楽しく笑えているだろうか? そんな不要な事を考えてしまう私はおじいさんが少し羨ましいのかもしれない。 「それにしても寒くなってきおったなぁ」  するとおじいさんはそう空を見上げた。冬の蒼穹はいつも以上に澄んでいて何処までも高い。空の大地、そう表現したくなる程に何処までも続いている。しかも今は夕焼けも相俟って眺めてるだけでどこか懐古的な気持ちになる。 「そうですね」 「そろそろクリスマスじゃな」  この人がサンタさんの格好をしてプレゼントを持っていけば、お孫さんはきっと大喜びなんだろうな。ふと思ったにしては鮮明にその光景は想像できた。
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