クリスマスの秘密4

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クリスマスの秘密4

「君は――サンタクロースはいると思うかね?」  そんな勝手な想像をしてると、おじいさんは子どもみたいな事を尋ねてきた。まさか年上の人にそんな事を訊かれると思ってなかった私は少し返事に困っていたものの――おじいさんを見ている不思議と本心が溢れ出してきた。 「はい」  大きくなってからは誰にも行った事の無い――それは心からの純粋な言葉だった。確信的で自信に満ちた声が内から込み上げてくるのを感じる。 「実は私、子供の頃にサンタさんに会ったことがあるんですよ。思い浮かべてた、絵本から出て来たような期待を裏切らない――本当にサンタさんって感じで。もちろん、夢だって言われたら否定は出来ないですけど……でも私はいると思います。あの時会えたサンタさんも現実で、毎年クリスマスに子ども達を笑顔にしてくれてるだと思います」  いつの間にか私は他の人には言えない――冗談だと思われるような事を本気で口にしてしまっていた。その存在の真実を知るという事は、子どもから大人への一段でもある。だけど私はその一段の前で立ち止まり続けていたとしても、心の底から信じてる――サンタクロースという存在を。 「ほっほっほっ」  するとおじいさんはサンタさんを真似るように緩やかなステップの笑い声で体を揺らした。 「やはり儂の見込んだ通りじゃ」 「見込んだ?」  おじいさんが何を言ってるのか全く意味が分からなかった私は思わず首を傾げた。
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