5220人が本棚に入れています
本棚に追加
人を好きになることが怖くなり、男性も怖くなった。だから高校は女子高に進学した。
女子高は楽だった。派手で可愛い子もたくさんいたが、自分と同じように地味で目立たない子もたくさんいた。けれど、瑠衣は女同士の陰湿さをそこで知ることになる。
「瑠衣よりは可愛いって思ってるもん。あの顔に生まれてたら生きていけない」
「瑠衣は最高の引き立て役だからねー」
委員会で遅くなり、靴箱で友達を待たせていた時だった。遅くなったことを詫びようと声をかける寸前に聞こえた言葉だった。高校では女の子しかいないから安全だと思った。
直接酷いことを言わないから女の子は平気だと思った。けれどそうじゃなかった。男も女も関係ない。皆整った顔をしている人間が頂点で、不細工は底辺扱いだ。
表向きは仲良しこよしをしていても、どこかで自分の方が上だと相手を見下している。だからその相手が必要なのだ。容姿が整っていれば、その分見下す相手が多くなる。底辺の自分なんて汚物扱いだ。それどころか眼中にもない。だから瑠衣は、男女関係なく生まれつき容姿の整った人間が大嫌いだった。
特にイケメン嫌いになったのは、高校生の時にクラスメイトの兄に一目ぼれをしたことがきっかけだった。文化祭にやってきた1つ年上の彼は、瑠衣が当時好きだったアイドルに似ていた。
爽やかで、目鼻立ちがはっきりしていて笑顔が可愛くて、誰もが振り返るようなイケメンだった。瑠衣はつい目で追うようになり、彼が最寄り駅付近の高校に在学していることも知った。
探るつもりはなかったが、学校帰りに寄ったコンビニで彼がバイトをしているところを発見したのだ。
「あ、S高の子ですか? 俺の妹もS高なんです」
そう気さくに声をかけてくれたから、瑠衣は違うとわかっていながらも嬉しくなってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!