5228人が本棚に入れています
本棚に追加
秋帆は苦笑すると「なんか堀江さん見てると、昔の自分を見てるみたでさ。お節介だったらごめん」と続けた。
瑠衣は衝撃を受けた。芸能人は整形が当たり前だっていうし、韓国では親が誕生日プレゼントで整形を受けさせるなんていう。けれど、瑠衣の周りで表立って整形をしている人なんていなかったし、冗談で整形しろと言われることはあっても本気で勧めてくる者はいなかった。
「多田さんは……いつからしてるの？」
瑠衣はおずおずと尋ねた。秋帆は、スマホを上着のポケットにしまいながら口を開いた。
「高校生の時。私、いじめられて不登校になったんだ」
「え……？」
「あ、それは中学の時ね。親は別に行かなくてもいいって言ってくれたんだけど、その内イジメさえなかったら私も高校行きたかったなって思って」
「そう……なんだ」
瑠衣には秋帆の気持ちは痛いほどよくわかる。陰口を叩かれるのも、笑われるのも、自分の容姿のせいだ。他の人はされないことを自分だけが受け止めなければならないのは本当に辛い。
「だから、定時制の高校に行って働きながら整形したの」
「え⁉」
「定時制なら普通の高校より時間も少ないし、人も少ない」
「うん……」
「皆仕事してるからあんまり他人に関心はないし、私の顔がどんどん変わっていってもそんなに興味を持つ人もいない」
「バレないもんなんだね……」
瑠衣はすっかり秋帆の話に聞き入ってしまった。そして、興味深々だった。自分とは決して仲良くなることはないと思っていた秋帆が、実は自分と同じ境遇でこの苦しみから抜け出す方法を知っていたのだから。
それから瑠衣は、小一時間ほど秋帆と話したあと帰宅したが頭の中は整形することでいっぱいだった。画面の中でキラキラしたアイドルを眺めるよりも、実際に夢を与えてくれた秋帆に憧れた。
最初のコメントを投稿しよう！