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気付けば瑠衣は、成美のことが大好きになっていた。おそらく生まれながらにして容姿に恵まれ、たくさんの人から愛情を与えられて育ってきたからこんなふうに他人に優しくできるのだ。そう思わずにはいれなかったが。
瑠衣も「私だって元々可愛くて、友達もたくさんいたら成美さんみたいに分け隔てなく他人とコミュニケーションがとれた」と言い訳をしてみたが、結局のところ美しい容姿を手に入れてもコミュニケーション能力が上がるわけではないと次の課題を見つけるだけだった。
高校時代に振られてから怖くて恋愛もできなかった。22歳で看護師になってからも、男性に話しかけられれば萎縮してしまう。
恋愛どころじゃなかった。
そんなことも瑠衣は成美に相談した。成美のように、誰とでも自由に会話ができて、色んな恋愛をしてみたいと。
22歳にもなって、誰とも付き合ったことがないなんて恥ずかしいと顔を赤くさせた。その話の延長で、瑠衣は整形していることを成美にだけは打ち明けたのだった。
「過去に酷いことをされた経験がなくても人付き合いが苦手な人もいるのよ。私は誰かと話をするのが好きだけど、1人でいることを好む人もいる。そして、人見知りせず誰とでも仲良くなる人を好まない人もいる」
「たしかに……」
「だから瑠衣ちゃんはそのままでいいのよ。こうやって自分の秘密を話してくれたってことは、少なくとも私のことは信用してくれたってことでしょ?」
「それはそうです!」
「だったらそうやって少しずつ、心を開ける人を増やしていったらいいと思う。看護師は嫌でもコミュニケーションを取る仕事よ。3年も働けば自然と他人とコミュニケーションが取れるようになるわよ」
深刻な顔をしていた瑠衣にふっと成美は笑って言った。
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