相談相手

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 瑠衣はどうしたらよかったのかわからなかった。実際に自分の顔は自分でも見とれてしまうほど美しくなった。「綺麗だね」「可愛いね」と言われることにも少し慣れてきた。  デブだと馬鹿にされた過去を払拭したくて、休みの日は必ずジムに行って体を鍛えた。運動は苦手ではなかった。顔面は自分の努力ではどうにもできないが、体型は努力したらした分だけ成果が現れるから。  腹筋には綺麗な縦線が3本入っているし、二の腕にたるみなんかない。あの頃バカにした人間に自信をもって見せつけてやれるくらいの体型を手に入れた。  太ってから痩せたため、胸はよく育っていた。それでも形が気に入らなくて、看護師になった2年目に夏休みを使って豊胸手術を受けた。脂肪吸引はダウンタイムが長く、豊胸とのダブルパンチは厳しいからと脂肪注入はやめた。ヒアルロン酸注入は効果が数年しか持たないのでこちらもパスだった。  残るはシリコンバックだが、今の技術は凄かった。形が綺麗になるだけでなく、柔らかさもそれなりにあるのだ。  シリコン豊胸のダウンタイムも半年だったが、最低3日間安静にしていればその後仕事復帰はできた。ただ、腋下にメスで切開しそこからシリコンを入れるため、傷跡が残る。そこが引き連れて痛いなんてことはあったが、数年前のそんな痛みも今では自慢の胸だと思えた。  自分の体を少しずつ好きになれた。底辺からやっと人間扱いされるようになったのだ。ようやく人から愛されることを知ったのだ。それなのに、「偽物」というたった一言で振られたのだ。  瑠衣が「整形してない前の私だったら好きになってた?」そう最後に尋ねたが、つばさは答えなかった。整形してなくてもダメ、整形していてもダメ。それなら私はどんなに綺麗になっても一生幸せになんてなれない。そう思うと絶望しかなかった。
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