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「いい人ばかりだと思えるのは、きっと瑠衣ちゃんも笑顔で接せられてるからだと思う。容姿だけじゃないって言ったけど、性格的なこともあると思うわ。あの人はいつも不機嫌で話しかけづらいとか、他人の悪口しか言わないからあまりいい気がしないとか」
瑠衣は、成美が他人の悪口を言っている人に対して「あまりいい気がしない」と言っていたことを思い出した。おそらく成美にも苦手な人間がいるのだろうと思った。
「私も苦手な人はいますよ。すごく嫌いなわけじゃないけど」
「うん。でもそれって接してみてわかることじゃない。その人の性格って」
「仕事だったら接しないわけにはいかないですからね」
「それはそうだけど、瑠衣ちゃんの友達はどう? いい子だと思ったから友達になれたんじゃない?」
瑠衣は数人の顔を思い浮かべた。学生時代は友達がいなかった。ようやく専門で秋帆と出会い、仲良くなれた。それは元の容姿が悲惨だったという共通点があったから。
その秋帆は瑠衣よりも先に看護師になった。だから1つ上の先輩なのだ。院内でたまに会えば話はするが、先輩にため口をきいているのはいい顔をされないので、秋帆と話す機会もすっかり減ってしまった。
その代わり、仲の良い職場仲間もできたし、その人の紹介で新たにできた友人もいた。ただ、誰にも整形のことは言っていない。皆、瑠衣が元からの美人だと思ってたくさん褒めてくれるのだ。
スタイルがいいと言われるのは嬉しかった。可愛いや綺麗と言われるのも最初の内は嬉しかったが、その内整形だと知ったらガッカリされるだろうという気持ちが勝って素直に喜べなくなった。
「友達は皆好きです。性格も好き」
「接してみて好きだと思えたから友達になったんでしょ? 宇野先生とだって接してみて心を許せると思ったから好きになったんじゃないの?」
「そうですけど……」
「それじゃあ、次の恋愛も一緒だと思うの。自分が苦手だと思い込んでいるだけで、接してみたら好きになれるかもしれない」
「あの患者さんの話ですか?」
瑠衣は戻ってきた会話に少し息を漏らした。一度身に着いた苦手意識は、簡単には拭えないのだ。
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