相談相手

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「俺のこと騙してたんだな。まさか、全身整形してるなんて……」 「こ、これは! 確かに整形はしてるけど……つばさのこと好きなのは本当だよ?」  瑠衣は自分の心臓の音をすぐ近くで聞きながら、必死にどれほどつばさのことが好きかと訴えかける。 「いいよ、そんなことは。俺が外科医だって知ってて黙ってたんだろ? 悪質だよ」 「悪質って……」 「医療の技術を整形なんかに使う医者は大嫌いなんだ。お前みたいに人工的な人間もな」 「なっ……」  瑠衣は愕然とした。優しいつばさにお前呼ばわりされたのは初めてだった。そしてこんなふうに軽蔑した目を向けられたのも。 「別れてくれ」 「え……」 「結婚する前にわかってよかったよ。子供なんか生まれたら誰の子かわかんない顔をした子だっただろうし」 「ひど……」  瑠衣は唖然として両手で口元を押さえた。 「酷いのはどっちだ。この、顔面詐欺師が。金で手に入れた美貌なんか全部偽物だ。俺は紛い物には興味ないんだよ」 「……」  言葉を失った瑠衣をよそにつばさは荷物を手に持って立ち上がる。 「お前と付き合ってた俺も恥をかくから整形のことは誰にも言わないよ。ただ、今後一切俺には近寄らないでくれ」  つばさはそう吐き捨てて1人で店を出て行った。静かな雰囲気、穏やかなクラシックが流れる中で、瑠衣は呆然としながら水滴が滴る水の入ったグラスを眺めていた。  
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