相談相手

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 その日を境に瑠衣は成美と頻繁に会うようになった。片道車で2時間でも、ドライブだと思えば苦痛ではなかったし、成美の方から瑠衣を訪ねてくれることもあった。時には中間地点で待ち合わせすることもあった。  今回は、成美の自宅にお邪魔した瑠衣。瑠衣の元彼は、成美も一緒に仕事をしたことのある医師だった。成美がたった半年だけ脳神経外科の手伝いに行ったことがあったからだ。  産休、育休を取る者が2人いて、人手不足だった。新たなスタッフの配属が決まるまで、成美が仮で勤務することになったのだった。  宇野つばさは、肩幅が広く筋肉質なわりに身長は高い方ではなく、目の幅が狭いことで目付きが悪く見える。  そんなに喋る方ではないが、喧しく怒るタイプでもなかった。 “当たり障りない”がしっくりくるような男だ。実は成美もその半年間の中でつばさに食事に誘われたこともあった。  その頃には前夫と交際していたため、「彼氏がいる」とさらりと断った。成美は、わざわざ言うことでもないと、そのことを誰にも言わなかった。  瑠衣が脳神経外科に異動になったのはその後のことだが、成美もわざわざそんなことは言わなかった。  しつこく誘われたわけでもないし、断ったからと言って嫌がらせをされることもなかった。そもそも、半年という短い期間だったから心臓血管外科に戻ってからは、特に顔を合わせる機会もほとんどなくなった。  だから、瑠衣がつばさと付き合い始めたと成美に報告した時には心底驚いた。 「口数は多くないけど、けっこう話すと優しいんですよ」  瑠衣がそう嬉しそうに語っていたから、成美もいい人なのだと思っていた。言い方は悪いが、つばさ自身が容姿が整っている方ではないため、見た目で判断するような人間だとは思っていなかった。
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