相談相手

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 つばさと瑠衣は順調な交際を辿っていたはずだった。多忙な2人なりに時間を合わせて会っていた。  お互いの家に泊まったり、たった数十分だけお茶をすることもあった。だからそろそろ同棲や結婚も視野に入れていたというのに結果がこれだ。  瑠衣が泣くのも無理はない。ただ、成美に結婚前にそういう人間だったのだと気付いて良かったと言われてしまえば、成美の泥沼離婚を連想して自分が1番不幸だとも言いづらくなってしまった。 「たしかに……結婚する前でよかったけど……」 「でしょう? 結婚した後じゃ大変よ。苗字を戻したり、親族にも説明したり」 「でも……私もう28ですよ? 周りはどんどん結婚していって、同期でも結婚決まってないの私だけなんですから」  瑠衣は思い出したらまた悲しくなった。同期全員と仲がいいわけではないが、少なくとも会えば全員と笑顔で会話くらいはする。  女性陣は、院内恋愛が多く職場の医師や同期同士で付き合ったり結婚したりしている。  いずれも結婚の報告を受けたり、同棲中で来年には挙式をするなんて話を聞いた。30歳目前であり、瑠衣もとうとう皆に嬉しい知らせができると思っていた。  その予定が全てなくなり、瑠衣の心はポッカリ穴が空いてしまったようだ。 「瑠衣ちゃんは結婚がしたいの?」  成美は、泣き止まない瑠衣に優しく尋ねる。成美には、本気で瑠衣がつばさのことを愛していたように見えた。  だから、結婚できれば誰でもいい。なんて、結婚だけを望んでいるようにも思えなかったのだ。 「私は……幸せになりたいんです。誰か1人でいいから愛されたいんです」  瑠衣はポツリとそう言った。整形していることは、誰にも言わないつもりだった。けれど、ずっと隠し事をし続けるというのは中々苦しいものだ。  新人看護師として散々失敗し、何度もかっこ悪いところを見られている成美には、5年前、初めて整形していることを打ち明けた。
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