大和郡山連続殺人事件

祭りのあと

　大和郡山まつりの翌日、藤堂はリフレッシュのために郡山運動公園を訪れた。広々とした公園内を歩きながら、自然の美しさと静けさに心を癒される。公園の中心には大きな湖があり、藤堂はその周りを散策していると、地元の子供たちがカモに餌をやっている姿を見かけた。

　藤堂が湖のほとりで一息ついていると、突然、公園の奥から悲鳴が響いた。藤堂は瞬時に立ち上がり、悲鳴の方向へ駆け出した。現場に到着すると、地元のランナーが倒れているのを発見した。周囲には数人の見物人が集まり、混乱している。

　藤堂は、すぐに119番通報をし、救急車が到着するまでの間、現場の状況を確認した。ランナーは中年の男性で、頭部に深い傷を負っていた。彼の脇には血のついた石が落ちており、明らかに誰かに襲われた痕跡があった。藤堂は、現場に居合わせた見物人たちに目撃情報を聞き始めた。

　藤堂は、一人の年配の男性に話しかけた。

「おじいさん、ここで何が起きたか見ていましたか？」

　年配の男性は落ち着いた声で答えた。

「ええ、見ていました。私はいつもこの時間にここを散歩しているんですが、突然あの男性が誰かに襲われたのを見かけました。犯人は黒いパーカーを着ていて、顔はマスクで隠していました」

　藤堂はその証言をメモしながら、さらに詳しく尋ねた。

「その人物の特徴について他に何か覚えていますか？」

「うーん、あまりよく見えなかったんですが、犯人は急いでこの方向へ走り去りました」

　年配の男性が指さした方向を見た藤堂は、すぐにその道を追跡することにした。

　藤堂はその道をたどりながら、周囲の目撃者たちに話を聞き続けた。公園の出口付近で、若い女性が目撃情報を提供してくれた。

「私はあの黒いパーカーの人が公園を出て、あの角の家に入るのを見ました」

　藤堂は感謝の意を伝え、その家へと向かった。家の前で立ち止まり、中を覗くと、不審な動きをする人物が見えた。

　藤堂はドアをノックし、不審な人物が出てくるのを待った。数秒後、ドアが開かれ、黒いパーカーを着た若者が顔を出した。

「何かご用ですか？」

　藤堂は冷静な声で答えた。

「先ほど公園で事件がありました。あなたに少しお話を伺いたいのですが」

　若者は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静を取り戻し、藤堂を中に招き入れた。
　家の中で藤堂は若者と向き合い、質問を続けた。

「公園で倒れていた男性を知っていますか？」

　若者は動揺した様子で答えた。

「いや、知らないです。でも、最近あの辺りでトラブルがあったという話は聞いています」

　藤堂は若者の反応を注意深く観察しながら、さらに追及した。

「トラブル？具体的にはどのようなトラブルですか？」

　若者はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。

「実は、あの男性と私の友人が言い争いをしていたんです。その友人が犯人かもしれません」

　藤堂はその情報を元に、若者の友人について詳しく聞き出した。友人の居場所や最近の行動について調査を進め、最終的に友人が事件の犯人であることを突き止めた。

　事件を解決した藤堂は、大和郡山での時間を通じて、新たな気持ちで捜査に戻る決意を新たにした。静かな街並みと地域の温かい人々との交流は、彼にとって大きな癒しと力となった。

　こうして、藤堂は再び捜査の世界へと戻り、大和郡山での経験を胸に新たな挑戦へと立ち向かうこととなった。