7人の犠牲者

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

7人の犠牲者

 大和郡山での事件解決後、藤堂は自らに新たな課題を課すことにした。最近、都会で急増している若者の家出事件に注目し、その背景を探ることに決めたのだ。  捜査を進める中で、藤堂は家出した若者たちが頻繁に使用している出会系アプリの存在を知った。このアプリを使って連絡を取り合う若者たちが、リアル脱出ゲームのようなイベントを通じて集まっているという情報を掴んだ。  藤堂は自らアプリに登録し、無意識のうちに家出した若者たちと接触を試みた。彼らの信頼を得るために、藤堂は様々な知識を駆使してリアル脱出ゲームに挑戦し、見事にクリアした。  その過程で、藤堂は一人の若者と親しくなった。彼は家出の理由を語り出し、家庭内での問題や孤独感を吐露した。藤堂はその若者の悩みを真摯に受け止め、解決の糸口を探ることにした。  ある夜、藤堂はその若者から緊急の連絡を受け取った。彼の隠れ家に何者かが侵入し、鍵が破られていたという。藤堂は急ぎ現場に駆けつけ、キーピックの跡を発見した。 --- 「大丈夫か?何があった?」藤堂が息を切らしながら駆け込んできた。  若者は震える声で答えた。「藤堂さん、誰かが僕の部屋に入ったんです。鍵が壊されてて…怖いです」  藤堂は若者の肩に手を置き、静かに言った。「落ち着け、俺がいるから安心しろ。このキーピックの跡、どうやらプロの仕業だな。何か盗まれたものはないか?」  若者は頭を振った。「特には…。でも、何か探してたみたいです」  藤堂は眉をひそめた。「わかった。とりあえず安全な場所に移動しよう。君がここにいるのは危険だ」  若者は困惑の表情を浮かべた。「はい。でも、どうしてこんなことに…?」 「最近、家出した若者を狙う犯罪組織があるって聞いている。恐らく、君を狙っているのもその連中だろう」藤堂の声には冷静さが漂っていた。 ---  その後の捜査で、藤堂は家出した若者たちを狙う犯罪組織の存在を突き止めた。彼らは出会系アプリを利用して若者たちを罠にかけ、悪事に巻き込んでいたのだ。  藤堂はこの組織を一網打尽にするために、警察と協力し大規模な捜査を展開した。結果として、犯罪組織は解体され、多くの若者たちが救われた。 --- 「藤堂さん、本当にありがとうございました。僕、これからどうすればいいんでしょうか?」若者は不安げに尋ねた。  藤堂は微笑んで答えた。「まずは家族としっかり話し合うことだ。君が抱えている問題を一人で解決しようとするのは難しい。誰かに頼ることも大事だぞ」  若者はうなずいた。「わかりました。これからはもっと周りに相談してみます」 「それでいい。君が元気になって、これからの人生を歩んでいく姿を見られるのが、俺にとって一番の報酬だ」藤堂の言葉は心からのものであった。 ---  この経験を通じて、藤堂は若者たちの心の声に耳を傾けることの重要性を再認識し、これからも彼らを守るために全力を尽くす決意を新たにした。    藤堂は再び捜査の現場に戻り、家出事件の解決に成功した。しかし、新たな挑戦が待っていた。最近、学校でのイジメが原因で失踪する若者が増えているとの情報が入ったのだ。藤堂はこの問題を解決するために、再び動き始めた。  ある日、藤堂のもとに一本の電話が入った。電話の主は、イジメの被害者の家族であった。彼らの息子が突然姿を消し、警察に相談したものの、手がかりが得られずにいた。 --- 「藤堂さん、どうか助けてください。息子が行方不明なんです」母親の声は震えていた。 「わかりました。すぐに捜査に取りかかります。何か心当たりはありますか?」藤堂は優しく問いかけた。 「最近、学校で酷いイジメに遭っていたみたいです。でも、息子は何も話してくれなくて…」母親の声は悲しみに満ちていた。 「それは辛かったでしょう。安心してください。必ず見つけ出します」藤堂は決意を新たにした。 ---  捜査を進める中で、藤堂は「名義」と呼ばれる謎の存在にたどり着いた。「名義」はイジメの主犯格であり、犠牲者の数はすでに7名に上っているという情報があった。  藤堂はさらに調査を進め、「名義」が複数の偽名を使っていることを突き止めた。彼は「伊緒」や「王子」などの名前を使い分け、イジメを指示していたのだ。また、彼のグループは「ジョア」と呼ばれるコードネームを持つ人物に資金提供を受けていることも判明した。 --- 「名義…伊緒、王子、ジョア。彼らはどこにいるんだ?」藤堂は捜査会議で呟いた。 「藤堂さん、これらの偽名は全て同一人物が使っている可能性があります」部下の一人が言った。 「なるほど。一人の指導者が複数の顔を持ち、イジメを操っているのか」藤堂は腕を組んで考え込んだ。 「犠牲者が7名に達していることからも、この『名義』を早急に捕まえる必要があります」部下は真剣な表情で続けた。 ---  藤堂はイジメの現場を抑えるため、学校に潜入調査を行うことにした。教師や生徒たちとの対話を通じて、次第に「名義」の正体に迫っていった。そして、ついに「名義」が一人の生徒であることを突き止めた。  夜の帳が降りる大和郡山。街の静けさの中に、緊迫した空気が漂っていた。捜査班が集まる学園内の各所では、遺体の発見とその調査が進められていた。探偵クラブのメンバー、葛城烈と秋山美咲は、事件現場を一つ一つ確認しながら、その状況を把握していた。 --- #### 漫画喫茶  冷たい照明の下、漫画喫茶の一角に置かれた椅子の上で、山田太郎の遺体が発見された。彼は椅子に縛られ、口に布が押し込まれていた。美咲は遺体を見つめ、周囲の状況を確認しながら、警察に指示を出す。 「こちらが山田太郎の遺体です。窒息による死亡が推測されます。布で口を塞がれているのが見て取れます」  葛城は静かに確認しながら、遺体のそばに置かれた道具や痕跡に目を凝らした。 --- #### 学園内カフェテリア  次に向かったのは学園内のカフェテリア。テーブルの上には、佐藤健の遺体が横たわっていた。彼は飲み物を摂取した直後に倒れ、急性中毒によって命を落としたとされる。テーブルには彼が飲んでいたグラスがあり、その中には毒物の痕跡が残っていた。  美咲はグラスを手に取り、分析用のサンプルとしてラボに送るよう指示を出した。「毒物の特定が急務です。迅速に処理してください」 --- #### ボート部の練習場  ボート部の練習場では、鈴木一郎の遺体が発見された。彼は水際で倒れており、頭部に致命傷を負っていた。周囲にはボートが散乱しており、事故が起こった可能性があったが、暴行の跡も見受けられた。 「ここで何があったのか、目撃者がいないか確認してください」葛城は現場の状況を確認しながら、周囲のスタッフに指示を出した。 --- #### 学園のプール  プールサイドに近づくと、田中真美の遺体が発見された。彼女は水に浮かぶ状態で、溺死が確認された。プールの水面には彼女の持ち物が浮かんでおり、周囲の安全対策が不十分だったことがわかった。  美咲はプールの係員に、「このプールの監視体制と過去の記録をすぐに提出してください」と命じた。 --- #### 体育館  体育館に入ると、山本美咲の遺体が発見された。彼女の首には絞殺の跡があり、体育館の一角には抵抗の跡が散乱していた。格闘の痕跡が明らかに現場に残されており、犯人との激しい戦いがあったことが窺えた。 「体育館の防犯カメラの映像を確認し、目撃者を特定してください」葛城は現場検証を進めながら指示を出した。 --- #### 学園の屋上  屋上に到着すると、小林翔太の遺体が発見された。彼は屋上からの落下によって死亡しており、周囲には落下の跡と遺留品が散乱していた。自殺と見なされていたが、周囲の状況から他殺の可能性が強く疑われた。 「屋上での足跡や手がかりを詳しく調べてください」美咲は周囲を徹底的に調査するよう指示した。 --- #### 寮の部屋  最後に、寮の部屋で高橋悠斗の遺体が発見された。部屋は散乱しており、大量の薬物が見つかった。彼は薬物の過剰摂取によって死亡しており、状況から他殺の可能性が高いとされた。 「部屋の調査を徹底し、薬物の入手経路を追跡してください」葛城は調査の進行状況を確認し、次のステップへと進んでいった。 ---  すべての現場を調査した後、葛城と美咲は、それぞれの死因と事件の関連性を結びつけるため、深い思索に沈んでいた。各所での証拠と遺体の状態が、事件の真相に迫る手がかりとなることを信じて、彼らは次のステップへと進んでいった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加