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調査員志願
事務所と引き換えにするほどじゃない――確かにその通りなのだが、七年前に手掛けたことの結果がゼロというのでは探偵社としてあまりにもふがいなさすぎる。やはり七年後の「今」の調査も多少はすべきなのではないか。
私は意を決し、息を深く吸うとおもむろに口を開いた。
「みんな、ちょっと聞いてくれる? 今、羽月さんから聞いた話によると、多草教授の施設にこれと言った動きはなく、教授からも連絡はないそうよ。つまり、調査の報告もできない状態ってわけ。こういう場合、一応の結果をまとめて終わりなんだけどみんな、これで終わっていいと思う?」
私は所長らしからぬ「けしかけ」を口にした。最初に口を開いたのは金剛だった。
「施設に行くんですよね? 行きますよ」
「当然、俺も行きます。こいつだけじゃ心もとない」
「なんだと。お前、ボスにもしものことがあった時に「飛べる」のかよ。小さくなることしかできないくせに」
「肝心な時に飛べなかったらどうするんだよ。ただのお荷物じゃねえか」
「なにお」
「二人とも待って。確かに二人がいてくれるのは心強いけど、施設の様子を見てくるのは私一人でいいと思うの」
「なんですって? 冗談じゃない。行くなと言っても行きますよ」
「ちょっと様子を見て来るだけ。深入りはしないわ。もしかしたら『緑衣の塔』が完全復活してるかもしれないし、いきなり中に飛び込んだりはしない」
「いや、それでも……」
「ボスの「ちょっと見てくるだけ」は大抵、やば……」
大神が私にとって耳の痛いことを言いかけた、その時だった。ふいに扉が開いて、小柄な影が中に入ってきた。
「私がお伴します、ボス」
「――石さん!」
現れたのは、全治一週間のはずの石亀だった。
「駄目じゃない、動きまわっちゃ」
「もし敵が念動力を使う奴なら、私がいないと話になりません」
「確かにそうだけど、石さんは病み上がりだし敵の動向も一切不明だし……」
「もう一人いたら、どうですかね。多少はマシじゃないですか」
突然、軽口と共に現れたのは、自宅療養に入ったばかりのエース、荻原だった。
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