願望めざめる

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願望めざめる

「こんな怪物に……なってたんだ」  私は七年前の『塔』とは比べ物にならないほどの大きさに、思わずひるみそうになった。。 「ボス、『死滅株』を出して下さい。念動力であそこまで飛ばしてみます」  石亀がいつにもまして低い声で言った。さすがに緊張しているのだろう。 「できそう?」 「わかりません」  私が『死滅株』をポケットから取り出し、握った手を開きかけたその時だった。 「――がっ」  突然、足元の苔を割って現れた太い触手が、石亀の身体に大蛇のように巻きついた。 「ぐう……う」 「――石さんっ!」  私は『死滅株』をポケットに戻すと、胴体を締めあげられもがいている石亀に近づいた。  ――どうすればいいの? このままじゃ石さんが死んでしまう!  眼球がせり出し、舌が口から飛びだした石亀を見ていたたまれなくなった私は、思わず触手に飛びつこうとした。 「駄目ですボス。私が焼きます!」  振り返ると眼鏡のフレームに手をかけた古森が、私に向かって「どいて下さい」というジェスチャーをした。 「それはまずいわヒッキ。石さんも丸焼きになっちゃうわ」 「じゃあ、どうしたらいいんですか! 他に助ける方法はないと思います」 「それはそうだけど……」  私が回らない頭を必死で働かせようと唸った、その時だった。突然、石亀が「ぐんぬごお!」と不気味な叫び声を発し、顔面がぐにゃりと歪んだ。  ――石さん、その能力は!  私が息を呑んで見守っていると、石亀の顔が見覚えのある少女のそれに変わり、同時に裂けたシャツとずり落ちたズボンの下からピンクのエプロンドレスが現れた。 「いたーい! 女の子に暴力振るうなんて、サイテーっ!」  キャンディだ、と私は思った。石亀には『可逆性変態人格』という別人格に変身する能力があるのだ。
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