鞭にやられる敵

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鞭にやられる敵

「――うっ」  荻原の手から放たれた球電を、『狂戦士』はやすやすとかわした。 「なかなかすばしっこいな」  荻原が矢継ぎ早に放った『エレクトリック・スナイプ』は『狂戦士』を捕え損ね、緑の障害物に当たって火花を散らした。やがて何かの装置らしい突起が直撃を受けて爆発し、苔の下から溶けたケーブルがぶら下がった。 「――そこだっ」  大鎌をかわした荻原が倒れ込みながら一撃を繰り出すと、巨大な球電は『狂戦士』を直撃しそのまま後方に吹き飛ばした。 「が……」  私たちが煙を上げて倒れている『狂戦士』の様子をうかがっていると、突然、周囲の触手が『狂戦士』の身体を包み焦げた部分を覆い始めた。 〔うう……〕  むくりと起き上がった『狂戦士』の手首から鎌がぽろりと落ち、代わりに「(もり)」を思わせる尖った物体が装填されるように現れた。 〔死ね探偵〕  『狂戦士』の手から放たれた「銛」は横に飛んだ荻原の顔を掠め、緑の突起に突き刺さった。 「おいおい、物騒な道具を使うのはやめてくれ」 『狂戦士』の「銛」は驚いたことに撃った後も「次の矢」が装填され、荻原は反撃の機会すらないまま緑の突起を盾に逃げ回った。 「――うっ!」  私が「逃げてテディ」と祈っていると、びしっという音が聞こえ荻原が膝をつくのが見えた。手首を『狂戦士』の鞭に捕えられ、足を止めざるを得なくなったのだ。 「こいつは不覚だったな……」  荻原は左手を縛められたまま後ずさると、先ほど『エレクトリック・スナイプ』の流れ弾を受けた装置に背を預けた。 〔もうそれ以上、後ろに逃げることはできない。終わりだ探偵〕  『狂戦士』は「銛」をへたり込んでいる荻原に向けると、感情のない声で言った。 「どうかな。玉が最後の一個になるまで諦めないのが私の流儀でね」  荻原は断線しているケーブルを手繰り寄せると、先端のプラグを噛みちぎった。 「――駄目よテディ!」  意図を察した私が叫んだ瞬間、荻原が火花を散らしている断面を素手で強く握った。  次の瞬間、白い火花が荻原の身体を通し「鞭」の方へと駆け抜けた。 「ぎゃああーっ」  荻原と『狂戦士』両方の絶叫が聞こえ、『狂戦士』の身体が離れた鞭ごと燃え上がった。 「ぐ……ああ……」  身体のあちこちから黒い煙を上げながら『狂戦士』が崩れると、荻原は力を使い果たしたと言うように仰向けに倒れた。 「――テディ!」 「すみませんんボス……さすがに少々、ばてちまいました」 「いいから動かないで。後は私がやるわ」
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