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罠かける探偵団
私はその場で身を翻すと、ガラス玉のような目でこちらを見ている『花菜』に「いい加減、こんなことはやめて花菜さんに身体を返しなさい、フローラ!」と言い放った。
〔ふふっ、ただの人間に私を止めることなどできないわ〕
『花菜』はそう言うと私に向かって両手をつき出した。やはりまだ体内に『フローラ』がいるのに違いない。超能力を持たない私が戦っても、勝負は見えている。仮に『死滅株』を打ちこんだとしても、『フローラ』は消滅せず人間である『花菜』が死ぬ可能性すらある。
――どうすればいいの?
私がポケットの中の『死滅株』をぎゅっと握りしめた、その時だった。
『花菜』の背後に巨大な緑の瘤が現れたかと思うと、表面が裂けて見覚えのある人物が姿を現した。
〔何っ?〕
『花菜』が振り返ると現れた人物――羽月雛乃は内ポケットから拳銃型の道具を取り出し、引き金を引いた。
〔――ぐわっ!〕
拳銃型の道具はどうやら噴霧器らしく、吹き出した霧を浴びた『花菜』は苦し気に呻いた。
「今よ所長さん、『緑衣の塔』にサンプルを打ちこんで!」
雛乃が叫び、私は「はい!」と頷くと『死滅株』のサンプルを手に『緑衣の塔』に向かって駆けだした。
「――ごめんなさいっ!」
私はサンプルのノズルを引っ張り出すと、巨大な超能力生物の表面に突き立てた。
「おおおおおーっ」
人でも獣でもない奇妙な咆哮があたりに響き渡り、『緑衣の塔』のみならず周囲の苔が一斉に枯れ始めた。
「う……ううっ」
倒れたままの『花菜』は二、三度大きく弓なりに身体を反らすと、そのまま目を閉じ動かなくなった。
私が呆然としていると、雛乃が近づいて来て「さすがは所長さんね」とほっとしたように言った。
「あの……どうやってドームの壁から脱出したんですか?」
「わざと捕まっていただけだから、石亀さんの力を使えばすぐ脱出できたの。でも、『フローラ』の本体である『花菜』が出てくるまで待たなくちゃならなかった。そこしか勝てるチャンスはなかったから」
「どういうことです?」
「あなたたちがどんな風にピンチになるかは、予知ヴィジョンでわかっていた。だから敵のボスが現れるまで待っていて、最後の最後に捕えられていたドームからここに移動したの」
私は元の姿に戻った石亀の方を見て「要するに『サイコネフィス』を騙したんですね……石さんとぐるになって」と言った。
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