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Episode1-1:平和なクトゥ村
今日も何も変わらない日常。
薪広いに水汲み、作物の水遣りに家畜の世話。
そして、手の空いた時間に日陰で昼寝。
これが格別の一時だ。
「やっぱりここに居た。起きなさいよこのサボり魔マグナ」
「んんー!…せっかく気持ちよく寝てたのに、アーシャ邪魔するなよ」
「僕もいるよ」
「お前もかよ、ダーリュ。仕事終わったのか?」
ダーリュは籠一杯の薬草を見せた。
「もちろん。うちの仕事はクトゥ村の特産品任されてるからね。サボる訳にはいかないよ」
「ははー!ダーリュ君には頭が上がりませんねー」
マグナはごろんと寝返りを打ちうつ伏せになって顔を地面につける。
「ダーリュを見習ってしっかり仕事しなさいよ」
バカなの?と付け加えた。
「そー言うアーシャはどうなんよ?」
「もちろんリーニャ叔母様のお使いは終わったわ。沢山訓練こなして次こそ王都へ連れていってもらうんだから!」
村にはリーニャという叔母が居て魔道士の家系らしくアーシャ家の日課を終えると魔法を教えてもらう代わりにこうしてお使いを頼まれるらしい。
「そういえばアーシャには夢があるんだよね?」
「夢ってなんだ?」
「…笑わないって約束できる?」
マグナは何度も頷く。
「私はリーニャ叔母様に学院に推薦してもらって入学してクトゥ村初の大魔法使いになるのが夢なの」
「リーニャなら絶対なれるよ!才能あるもの!」
「ふふん。期待して。ところでダーリュは将来の夢はあるの?」
「どーせ特産品で金持ち〜とかの夢だろ?」
「ちょっと!マグナは黙ってて」
アーシャはムッとしてダーリュのかわりに言い返した。
ダーリュは俯いて照れくさそうに二人に聞こえるか分からない程度の声で呟いた。
その後はアーシャが何て言ったのか何度も聞くが答えようとしなかった。
「ところでマグナは何か夢はあるの?」
帰り道、アーシャの質問攻めを躱し続けるダーリュは寡黙になったマグナに話題をすり替えた。
「…」
「ちょっと?」
マグナは両目を閉じ腕を組んで立ち止まった。
二人は顔を覗かせるが反応をみせない。
「んー…わっかんね!俺は今のままでいいかな…うん。今のままがいいな」
「何それ」
「マグナらしいや」
マグナはいたずらっぽい笑みをこぼし
「こういう事じゃ!」
と二人の首に腕を回し身を寄せる。
「ちょっとやめてよー」
「うんこくさいよー」
「え、うんこくさいヤメて?」
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